河内國平さんの刀剣に魂込めた歩み 橿考研で特別陳列
国宝・七支刀や藤ノ木古墳(斑鳩町)出土の飾り大刀など古代刀剣の復元で知られる刀匠・河内國平さん(82)=東吉野村=の作品を紹介する特別陳列が、橿原市畝傍町の県立橿原考古学研究所付属博物館で開かれている。復元七支刀や、1月に制作されたばかりの太刀など21点を展示。刀剣に魂を込めた60年間の歩みをたどることができる。3月17日まで。
河内さんは江戸時代から続く刀匠の家系に生まれ、関西大在学中に同大学教授だった末永雅雄・橿考研所長と出会い、古代の刀剣にひかれた。卒業後、人間国宝の宮入昭平氏に弟子入りして技を磨き、平成26年に刀剣界最高の「正宗賞」を受賞した。
古代の刀剣復元にも精力的に取り組み、百済の王から贈られたことを示す銘文が刻まれた七支刀に挑戦した。銘文に「百錬」の文字があることから、歴史研究者は通常の刀のように鉄を鍛えて作った「鍛造」とみていたが、刃が7本に分かれているため鍛造では制作が困難と判断。七支刀の実物も鍛造とは微妙な違いがあるとして、鋳型を使った「鋳造」の可能性が高いとし、鍛造と鋳造の七支刀を復元した。
特別陳列では、両方の七支刀を比較できるよう並べて公開している。河内さんや弟子らの作品は、刀身に浮き上がる波のような刃文が見えやすいよう照明を工夫して展示。太刀の制作工程が分かるよう、鉄を熱するために風を送るふいごや鎚などを並べて仕事場も再現した。
伊東菜々子学芸員は「刀剣ブームもあって、若い人が太刀を通じて古代にも興味をもってもらえれば」と話す。3月2日午前11時と午後3時に展示品解説。月曜休館。問い合わせは同館(0744・24・1185)。
「刀、ようやく分かってきた」 河内さんが講演
河内國平さんの講演会が県立橿原考古学研究所で開かれ、刀匠としての心構えなどに触れながら、「刀についてようやく分かってきた。今が人生の中で一番幸せ」と語った。
4歳で終戦を迎えた河内さんは、刀匠の父が軍刀に携わっていたことを振り返り、「昨日まで刀を作っていたのに、戦争が終わったとたんに刀はまかりならんと警察が調べに来た」と、一家が時代の波に翻弄された状況を話した。
昭和41年に大学を卒業して刀鍛冶になりたいと両親に伝えた際、「母親は『刀だけはやめて』と涙を流して反対した。親父は『刀の時代は終わった』と言っていた。ただ、後を継いでくれることを喜んでくれたように思う」と回想した。
河内さんは「出来る」の文字を幾つも連ねた自身の書を仕事場に掲げ、特別陳列でも展示している。河内さんは「弟子には『できない』とは絶対言わせない。『できるできるできる』と声に出して読ませる。できると思ってやり続ければいつか必ずできる」と強調。会場を訪れた刀剣ファンの若い世代に向けてメッセージを送った。