響く祈りの声、能登へも 東大寺「お水取り」 4年ぶり堂内で聴聞可能に
奈良市の東大寺二月堂で1日に始まった修二会(お水取り)の本行は、8日から後半に入った。練行衆と呼ばれる僧侶11人のうち祈りの中心の大導師が唱える「諷誦文」には能登半島地震のことも盛り込まれ、人々の幸福を祈願。新型コロナウイルス対策として設けられた制限が緩和されて4年ぶりに堂内での聴聞が可能となり、参拝者らは祈りの声に耳を傾けている。満行は15日未明。
小さな手松明を持った加供奉行という役が二月堂へ通じる登廊を3往復した後、練行衆がお松明の明かりに導かれて石段を上る。堂内からは練行衆が差懸(木沓)で床を踏み鳴らす音が聞こえ、夜の勤行が始まる。
「南無観、南無観…」。やがて本尊の観音をたたえる律動的な声明が響き渡り、板に身を投げ打つ荒行「五体投地」の痛々しい音も聞こえてくる。修二会は観音を前に、私たちに代わり練行衆が日ごろの過ちを懺悔する悔過の行だ。
今回、大導師は昨年に続き同寺清凉院住職の森本公穣さん(55)が務め、毎夜作法を行っている。諷誦文では「現在句」として能登半島地震について唱え、亡くなった人らの冥福と被災地の早期の復興を祈願。「過去句」には現在にもつながる戦禍を盛り込み、祈り続けている。
訪れた人たちはマスクを着用して二月堂内の「局」と呼ばれる所に入り、声明を聞いたり、手を合わせたりしている。