土器に触って、魅力に触れて 視覚障害者も楽しめる体感考古学企画展 橿考研で26日まで
目の不自由な人に考古学の魅力を感じてもらおうと、奈良県橿原市畝傍町の県立橿原考古学研究所の1階アトリウムで「さわって体感考古学の新地平」が開かれている。考古遺物はガラスケースでの展示が中心で、視覚障害者は手で触って形をイメージすることは難しい。企画展では、古墳時代の土器に直接触れて観察する「触察」のコーナーを設け、点訳の図録なども展示。障害の有無にかかわらず、多くの人が楽しめる博物館のあり方を紹介している。26日まで。
橿考研付属博物館では平成29年、古代の土器などに触ることができる企画展を開催。訪れた視覚障害者から「古代人のものづくりを感じることができた」など大きな反響があり、その後も障害者団体が研修などで同研究所を訪れるようになった。
一方で、博物館は歴史資料を保存して後世に伝える役割があるため、出土遺物を常に触れる状態で展示するのは難しい。北井利幸指導研究員は昨年にイタリアへ研修に赴き、全盲の理事長が設立した「オメロ触覚美術館」を視察。美術品の魅力をレプリカや点字の解説板などで伝える取り組みを知り、今回、触察をテーマにした展示を7年ぶりに企画した。
会場では、古墳時代の須恵器の実物や三角縁神獣鏡のレプリカを並べ、直接触れることができる。藤ノ木古墳(奈良県斑鳩町)出土の豪華な馬具などの形を凹凸で示した図録なども展示。企画展を解説した点訳のパンフレットを県立盲学校の協力で作製し、視覚障害者らを対象に無料で配布(数に限りがある)している。
北井さんは「展示物を見ることも触ることもできなければ、どうしても博物館から遠ざかってしまう。多くの人に触察の重要性を知ってほしい」と話す。土日・祝日休館、入場無料。問い合わせは橿考研(0744・24・1101)。