夜間中学で読み書き学んだ奈良の男性を映画に「35年目のラブレター」 鶴瓶さん主演、来春公開
妻へのラブレターを書こうと、64歳で退職後に文字を学ぶため夜間中学へ通った奈良市の元寿司職人、西畑保さん(88)の実話を描いた映画「35年目のラブレター」(塚本連平監督)が、来年3月7日に全国公開される。今年3月下旬には奈良県中央卸売市場(大和郡山市)など県内で撮影が行われ、映画関係者は「ぜひ奈良の人に見てほしい」と話している。
戦時中に生まれた西畑さんは、十分な教育を受けられず、読み書きができないまま大人に。長年支え続けてくれた同い年の妻、皎子さんに感謝の手紙を書こうと、奈良市立春日中学校の夜間学級に20年間通って文字を学んだ。
西畑さん夫婦の物語は、複数のメディアで取り上げられたほか、創作落語になるなどして広がり、感動を呼んだ。今回の映画では、笑福亭鶴瓶さんが西畑さん役を、原田知世さんが皎子さん役を演じる。
3月22日には、西畑さんが寿司職人だった頃に毎日通ったという県中央卸売市場で撮影が行われた。鶴瓶さんは、仲卸業者から寿司に使う魚を仕入れる様子を生き生きと再現していた。
撮影に同行した西畑さんは当時を思い出しながら「懐かしい」と目を細めつつ、「私の人生が映画になると聞いて驚き、そしてわくわくしています」と期待を寄せる。
文字を学んでからは毎年クリスマスに皎子さんにラブレターを渡していたという西畑さん。皎子さんはクリスマス直前の平成26年12月22日に亡くなり、手紙は渡せなかった。「夜間中学に通うことを応援してくれたのも妻だった。私たちの物語をみてほしい」と力を込める。
プロデューサーの森谷雄さん(58)は「西畑さんの物語は、何歳からでも人生に可能性を見いだせ、元気をもらえる。市場や散歩に出かけた公園など西畑さんが実際に生活した県内の場所で撮影できたことで、物語がよりリアルに浮かび上がるはず。県内の人たちにもそんな風景を楽しんでもらいたい」と話している。