「伎楽の魅力知ってほしい」出前授業で明日香小の児童たちが体験
1400年前の飛鳥時代に大陸から伝わった仮面劇「伎楽」の魅力を紹介する出前授業が4日、奈良県明日香村橘の村立明日香小学校で開かれた。3~6年生約160人が、紙で再現した伎楽の面をかぶって踊ったり、演目に合わせた役柄を演じたりして、古代の芸能の不思議な世界を楽しんだ。
伎楽は推古天皇の時代の612年に百済の人が飛鳥の地に伝えたとされ、奈良時代には東大寺の大仏開眼供養などで上演された。笛や鼓などに合わせて踊り、せりふがないのが特徴。伎楽面は、貴人や鳥、獅子などがユーモラスに表現され、中国から中央アジアに及ぶシルクロードの影響がみられるという。
鎌倉時代以降は衰退し、現在は伎楽面や装束、譜面が残るのみだ。同村は、飛鳥時代の遺跡「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」の令和8年の世界文化遺産登録を目指す中、遺跡だけでなく当時の音楽や舞踊を通じて飛鳥時代の魅力を感じてもらおうと、3年から伎楽再現プロジェクトをスタートさせた。
村内の子供たちが佐藤浩司・天理大名誉教授の指導で伎楽のオリジナルストーリーを制作し、山崎隆之・愛知県立芸術大名誉教授が紙を使った伎楽面作りを指導。伎楽が日本に伝わった状況について日本書紀には「百済人が少年を集めて伎楽を習わせた」と記されていることから、プロジェクトには子供たちが深く関わっている。
子供たちは、伎楽についての説明とともに、一列になって楽しく踊る「行道」や、伎楽の役柄に合わせた所作を自身で考えて踊っていた。5年の広井輝君は「せりふのないところが面白いと思った。今度は仮面も作ってみたい」と笑顔を浮かべた。
小池香津江・文化財課長は「伎楽にはシルクロードのエッセンスがたくさん詰まっていて、飛鳥の人たちが世界に目を向けるきっかけになった。子供たちにも、音楽や踊りを通じて世界を感じてほしい」と話した。夏休みには同小児童を対象にした伎楽面作りなどを予定している。