口と足で描く日本画家、故・南正文展 作品ゆかりの天理で開催 30日までなら歴史芸術文化村
事故で両腕を失い、口と足で筆を持って花鳥風月を描いた日本画家の故・南正文さんの作品展が、天理市杣之内町の道の駅「なら歴史芸術文化村」の芸術文化体験棟で開かれている。会場からは、代表作「活きる(桜)」の題材となった幾坂池の土手に立つ一本桜も眺めることができる。主催する一般社団法人「南正文よろこびの種を」の代表理事で妻の弥生さん(71)は、「間もなく桜も咲きはじめる。ぜひ楽しんでもらいたい」と話している。30日まで。

口に筆をくわえて繊細なタッチを描く南正文さん(「南正文よろこびの種を」提供)
南さんは、小学3年で父が経営する木工所で機械のベルトに巻き込まれ両腕を切断し、中学2年で口筆画家の弟子となった。口に筆をくわえるスタイルで毛筆と日本画に取り組み、平成24年に61歳で亡くなるまで900点もの絵画を残した。

代表作「活きる(桜)」に寄り添う妻の弥生さん=天理市
今回、「活きる(桜)」や遺作の「繁栄の桜」のほか、コスモスやヒマワリ、ツユクサなどをモチーフにした作品23点を展示。26日には弥生さんが、「活きる(桜)」の原寸大のリトグラフを市に寄贈した。リトグラフは後日、市役所1階の市民ホールに展示される予定。
道の駅南側にある幾坂池の土手に立つ一本桜は、春になると多くの人が訪れる撮影スポットで、周辺の緑と菜の花畑に桜の淡いピンクが映える様子が人気を呼んでいる。弥生さんは「『活きる(桜)』の里帰りとなったが、現実の桜との対比を楽しんでもらいたい。多くの人の目に触れることで、幾坂池の桜を大切に思うきっかけになれば」と期待を寄せている。
開場は午前10時~午後5時。無料。午前10時15分からと午後2時からは、南さんの軌跡を追ったドキュメンタリー映画「天から見れば」を上映する(観覧する場合はチケット代として千円が必要)。