奈良ホテルが創業時のレジスターブックを修復 2千人以上の宿泊者情報記載「歴史を感じて」

修復されたレジスターブックを手にする福田順さん=奈良市
奈良ホテル(奈良市)は、創業115周年記念事業の一環で行っていた創業時のレジスターブック(宿帳)の修復を終え、1階のショーケースで展示している。当時の宿泊者の情報が1冊にとじられており、副総支配人の福田順さんは「多くの人にホテルの歴史を感じてもらいたい」と話している。
レジスターブックは縦約㌢、横約42㌢の大きさ。創業日の明治42年10月17日から同44年5月7日までの約3年間の宿泊者2千人以上の名前や国籍などが英語で書かれている。新型コロナウイルス感染拡大前までは1階のメインレストラン内で展示していたが、劣化が進んでいたため、令和6年に創業115周年を迎えたのを機に修復することにした。
文化財保存や修理を手掛ける株式会社文化財保存(奈良市)に依頼し、道の駅「なら歴史芸術文化村」(天理市)にある工房内で同7月から約9カ月間かけて修復作業を実施。破れた表紙や劣化したつづり糸を外した上で、表面のほこりを除去し、虫食いや破れがある箇所は補強した。
その過程で、各ページの間にある破られた痕跡や、文字が反転して紙に写っている箇所が見つかり、各ページの間には元々インクを吸い取る紙もつづられていたことが分かった。さらに画像ソフトで解析した結果、紙には当時の系列グループのホテル名が記されていたことも判明し、インクを吸い取ることだけではなくチェーンホテルの宣伝も兼ねていたとみられる。
同ホテルは進駐軍に接収されていたことで戦前のものは処分された可能性があり、創業当時の記録が残るレジスターブックはこの一冊のみ。福田さんは「次の100年に向けてレジスターブックをしっかりと保管し、残していくことが私たちの使命です」と話していた。