葛城の染色作家、「染めゆかりの地で魅力伝えたい」アトリエを体験教室に

「多くの人に染色の魅力を伝えたい」と話す中居公子さん=葛城市
フランスで100年以上の歴史をもつ国際公募展で4度入賞するなど、国内外で高い評価を受ける葛城市兵家の染色アーティスト、中居公子さんが今春、自宅のアトリエを使って子供や大人を対象に染色体験教室を始めた。同市には、蓮糸を一夜で染めて当麻曼荼羅(まんだら)を織り上げた当麻寺の中将姫(ちゅうじょうひめ)伝説や、「染野(そめの)」という地名も残り、中居さんは「染めに縁のある地で染色の裾野を広げたい」と話す。
30年前から染色に取り組み、柿渋染めやろうけつ染めなどを通じて日本の伝統美を生かしながら斬新な作品を発表。小磯良平やヒロ・ヤマガタらも出品したフランスの国際公募展「サロン・ドートンヌ展」では、ろうけつ染めの1㍍大のタペストリーなどを出品し、平成21年以降4度にわたって入賞し、スペイン美術展でも入賞するなど注目を集めた。
活動の幅を広げる中、染色への向き合い方を変えるきっかけが新型コロナウイルス禍だったという。県内外のギャラリーでの個展が中止となり、発表の場が次々と失われた。
「創作して発表するという従来の活動以外に、何かできることはないか」と模索。コロナ禍も収束したことで、染色を通じて子供たちにも芸術の楽しさを肌で感じてもらおうと、体験教室を思い立った。

ステンドグラスの玄関ドアが特徴の山小屋風のアトリエ
自宅敷地内の山小屋風の木造アトリエを改装し、木のぬくもりの中で染色ができる雰囲気にし、自身の作品も展示。ステンドグラスがはめ込まれた玄関ドアは、イギリスの民家で使われた1920年代のもので、芸術とともに歴史も感じられる。
染めの魅力について中居さんは「草木染めは摘み取った時期が少しずれると異なる色になり、奥が深い」と説明。開花前の紅梅の小枝を煮て作る梅染めは淡いピンク色になり、「花を咲かせる前のエネルギーいっぱいの植物の生命力を感じます」。タマネギの皮は優しさのある黄色に染まり、教室では旬を迎えたヨモギも使った草木染めなどが体験できる。
「タマネギの皮のように捨てられるものにも魅力的な色がひそんでいる。子供たちに自然の不思議さも感じてもらえれば」と話す。
体験教室は5歳以上が対象で事前予約制。ハンカチ1枚で1500円~。問い合わせは中居さん(090・2700・4694)。