赤字続く小規模な米作り農家グループ化へ県が支援
高齢化などに伴う耕作放棄の増加を防ぎ農業を守ろうと奈良県は今年度から、赤字経営などが続く小規模な米作り農家をグループ化して支援する取り組みを始める。さらに、県内外の企業の農業への参入を促進し、将来の担い手確保につなげる。

雑草が茂った県内の耕作放棄地(県提供)
県によると、県内農業産出額のトップは品種「ヒノヒカリ」を主力とする米の87億円(令和5年)となっている。一方で、近年は田畑の耕地面積や総農家戸数が大きく減少。平成22年から令和2年にかけて耕地面積は2500㌶減の2万㌶に、戸数は6613戸減の2万1950戸となった。
特に小規模な米作り農家はトラクターやコンバインなどの機械に費用がかかるため採算が合いにくく、廃業するケースが多い。県はさらに耕作放棄が増えることを懸念し、小規模農家を支援することを決めた。
取り組みでは、今夏に3戸以上でグループ化を希望する小規模農家を募集。来年度にはまず共同で育苗に取り組んでもらって、田植えや稲刈りの際に機械を共同利用することでコストを抑えつつ、効率化によって販売額の向上につなげることを目指す。県では費用、技術面での支援を考えている。
県農業水産振興課の担当者は「『機械が傷んだらやめようか』と嘆く農家も多い中、この制度で継続するグループに育つよう支援していきたい」と話す。
また、企業の農業参入に向けては今年度、県内企業の意向を調査し、リストを作成。一方で貸し出し希望農地の情報もまとめ、来年度は企業向け農業参入ガイドブックを作るとともに、企業と農地のマッチングを支援する。

「鞄工房山本」が取り組んでいるトマト栽培(県提供)
県内ではすでに、ランドセルの製造販売を主とする老舗企業の「鞄工房山本」(橿原市)がトマトを栽培するなど、農業参入に乗り出している企業もある。
県担い手・農地マネジメント課の担当者は「農業参入はこれまでも何社かから相談があるので期待できる」とした上で、「販路を開拓し、地域ともうまくやっていくことが課題になるだろう」と話している。