「コアジサシ」ひなの巣立ち確認 今年も平城宮跡歴史公園で

コアジサシの親鳥と孵化したばかりのひな=奈良市(岡口晃子さん提供)
奈良市の平城宮跡歴史公園で今年も、環境省レッドリストの絶滅危惧種に指定されている野鳥「コアジサシ」のひなの孵化(ふか)と巣立ちが確認された。同公園で野鳥の観察を続ける奈良教育大自然環境教育センターの研究部員、岡口晃子さんによると、推測される卵の数の少なくとも9割近くに当たる羽のひなが巣立ちに成功したといい、「全国的にコアジサシの繁殖地の減少と営巣の失敗が相次ぐ中、極めてまれで貴重な繁殖成功例だ」としている。
岡口さんによると、コアジサシは4月17日に同公園北側の水上池に飛来したのを今季初確認。5月11日に同公園南部の砂礫(されき)地で抱卵が始まった。6月2日には最初のひなが孵化し、その後も順調に孵化が続いたという。
コアジサシは、春から夏にかけて日本に飛来する体長30㌢弱の渡り鳥。主な餌は小魚で、本来は海岸の砂浜や河川の中州に巣を作り、本州以南で繁殖する。奈良県は内陸部だが、同公園にはコアジサシの営巣に適した砂礫地があり、毎年この時期に飛来が確認され、夏の風物詩になりつつある。同公園の整備を担当する県は、コアジサシの繁殖を守るため、抱卵が確認されると草刈りや業者の立ち入りを一部制限している。
岡口さんによると、同公園ではコアジサシのほかにもケリやコチドリ、オオヨシキリなどの鳥が営巣しているといい、岡口さんは「この地に宿る多様な命の価値を知ってもらい、未来につないでもらえれば」と話している。


































