奈良「正論」懇話会詳報 なぜ石破首相は退陣しないのか 有元特別記者

「参院選後の政局」をテーマに開かれた奈良「正論」懇話会の講演会=奈良市
奈良市で28日に開かれた奈良「正論」懇話会の第96回講演会。「参院選後の政局」と題して講演した産経新聞特別記者の有元隆志氏は、参院選で自民、公明両党が大敗した原因を「保守層の期待を裏切っている」と断じた。自民党内で退陣要求が高まりながらも石破茂首相が続投に意欲を示す理由やポスト石破の見通しを語り「自民党を立て直し、安全保障や国内の諸課題への対策に早急に取り組まなければならない」と主張した。詳細は次の通り。
◆保守層への裏切り
参院選の比例代表の結果を見ると、自民、公明は大幅に票を落とし、共産党は日本保守党に負けた。日本維新の会は踏ん張ったが国民民主党、参政党を下回ったのが衝撃的。自民の選挙は支持層を固めないと勝てないが、大幅に減って参政や国民に流れている。
日本会議は7月24日付の声明で「リベラル化した自民に対し、保守層がノーを突き付けた結果」としている。本来、保守層が期待している憲法改正や外国人による土地買収の規制などを進めず、「LGBT理解増進法」を制定し、夫婦別姓の議論を進めようとしている。日本会議は「保守政党の中核としての矜持(きょうじ)を取り戻し、果断に国家政策を提案し実現することが党再生の道筋」としている。まさにその通りだ。
石破首相と国民意識との乖離(かいり)がひどい。「官邸病」にかかっていて、自分がやらなければ国が成り立たないと思い込んでいる。
石破政権の迷走は参院選直前に決めた国民1人当たり2万円給付だ。選挙向けのばらまきが見え見え。財務省寄りの立憲民主党の野田佳彦代表ですら食料品の消費税率0%を打ち出し、維新、国民なども消費税に手を付けろと言っているのに、石破首相は森山裕幹事長に止められて消費税に手を付けなかった。
これは森山氏が自民党税調のドンと呼ばれ、消費税導入を進めた故・山中貞則氏の議席を引き継いだことに理由がある。
石破氏は参院選でにっちもさっちもいかなくなって給付金を打ち出したが、評判を落とした。
◆石破首相が退陣しない理由
石破首相は8月15日の戦後80年の談話をやりたいと周辺に語っている。戦後70年で安倍晋三元首相が出した談話を上書きしようとする思惑ではないか。
安倍元首相の談話は侵略、おわびに言及しているが、一番言いたかったのは謝罪を次世代に背負わせないことだ。だが石破首相は「なぜあの戦争にわが国は突っ込んでいったのか。もう一度歴史に謙虚に学び、日本の平和は尊い犠牲の上にある、そのことに思いをいたしたい」と語り、戦争責任にこだわっている。
石破首相が懸念するのは8月15日に談話が出せなくなること。だから8月下旬まで引きずっているのではないか。
◆ポスト石破
昨年の総裁選に立候補したメンバーをみると有力候補は高市早苗氏だと思う。
安倍元首相が殺害され、昨年の総裁選は旧安倍派が政治とカネの問題でガタガタになって、高市氏は推薦人20人を集めるのにも苦労した。ところが地方遊説は非常に反応が良かった。党員・党友票は石破首相を上回って1位だった。
当初最有力とみられていた小泉進次郎氏は国会議員票は1位だが、党員・党友票は2人に差を付けられた。小泉氏の敗因は、最初の会見で選択的夫婦別姓に決着をつけると言い出したこと。再び総裁選に出ても夫婦別姓などに言及すると自民から票がはがれる。
日本を取り巻く安全保障環境は危うい。中国は軍備を増強し、北朝鮮は核開発だけでなく、ウクライナで実戦経験を積んでいる。自民は党を立て直し、安全保障や国内課題への対策に早急に取り組まなければならない。それが日本を立て直すことになると思う。


































