奈良「正論」懇話会詳報 李大統領の実用外交とは 神戸大院の木村幹教授

熱心に耳を傾ける参加者たち=奈良市の奈良ホテル
奈良市の奈良ホテルで10日に開かれた奈良「正論」懇話会の第97回講演会。6月に就任した韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が掲げる「実用主義」と対日関係をテーマとした木村幹・神戸大学大学院教授は「左派の政権だが、考えていることは意外と高市早苗首相と似ているかもしれない」と指摘した。詳細は次の通り。

実用主義と対日関係をテーマに話す木村幹教授
皆さんは、韓国が米国につくか、中国につくかで、中国でないなら米国と考えるが、どちらとも距離を置くという選択がある。
そうした環境の中で、李氏について紹介したい。貧しい家の生まれで、工場でも働いた。でも優秀で、大学に入るとひたすら勉強して卒業し、あっという前に司法試験に合格した。弁護士になったが、検察官か裁判官になりたかった。
2010年に京畿(キョンギ)道城南(ソンナム)市長になり、破綻寸前だった市の財政を立て直して、すごくできる地方自治体の市長だった。それで有名になり、大統領選挙に立候補して負けるが、京畿道の知事になった。左派だが、学生運動や労働運動でのし上がってきた人ではない。
言葉遣いは高市首相と似ているところがある。外交については「進歩か、保守かではなく、国益かどうかだけが唯一の判断基準」といい、皆さんが考える左派のイメージとは違う。左派は理想を語るが、李氏は理想を語らない。
「イデオロギーやスローガンではなく、経済と国民の生活を救う実践こそが新政府の進むべき方向」とし、要は経済。政権の眼目の「実用外交」は自分たちの利益になるかどうかだ。
経済問題の解決を重視する政権の課題が、トランプ関税などを巡る対米関係であることは明らか。
韓国はこれまでむしろ左派のほうが軍事費がのびている。右派は米国との関係で国を守るが、左派は米国にも頼りたくない。武器も自分で開発するので、今回のトランプ米大統領の原子力潜水艦の話は渡りに船だ。韓国は原子力潜水艦を持ちたい。トランプ氏は在韓米軍の負担を減らし、韓国に軍事負担を増やしてほしい。
高市首相が目指すものは日本の国益や安全保障。意外と「左」の李氏と「右」の高市首相は話が合うかもしれない。
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きむら・かん 昭41年大阪府生まれ、京都大学法学部卒業。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。愛媛大学講師、神戸大学大学院助教授などを歴任。著書に『韓国現代史』『韓国愛憎』(いずれも中公新書)など。


































