【まちの近代化遺産】朝ドラロケ地の木造校舎、旧宇太小学校
統廃合により平成18年3月に廃校となったが、25年にカエデ植物園「奈良カエデの郷『ひらら』」としてオープンした旧宇太小学校。NHKの朝の連続テレビ小説「あすか」のロケにも使われた戦前の木造校舎は、宇陀市菟田野古市場の山に囲まれた小高い丘にたたずむ。
明治7年に「第3大学区第14中学区第117番小学精成館」として開校、「宇太尋常高等小学校」に改称後、昭和10年には火災で校舎が全焼したが、地元住民らの協力で再建。現在残っている木造2階建てと平屋建て校舎2棟は、昭和13年までに建てられたものだ。
地元の木材などを使って建てられたという建物は手入れがよく行き届いている。廊下や教室の天井は、中央部分を高く仕上げた「折り上げ」と、和室の伝統的な「竿縁天井」の2つの工法が組み合わされた珍しい造り。板張りの廊下は全長60・5メートルで、1階には廃校まで使われていたという放送室が当時のまま残っている。
講堂として利用されていた音楽室は約200平方メートルの広さで、床、壁、天井の木目も美しい。昭和38年に寄贈されたグランドピアノや約20台のオルガンは、今もきれいな音色を奏でる。
宇陀市文化財課によると、「戦前の木造校舎で、旧宇太小ほど良好な状態で残るものはない」といい、昭和前期の小学校の姿をしのばせる貴重な建物だ。地元の人々の愛着も強く、「取り壊さないで」との声を受けて廃校から6年後の平成24年、旧宇太小の卒業生ら約100人でつくるNPO法人「宇陀カエデの郷づくり」が市から校舎を取得。地域の人々が協力して掃除や修繕に取り組み25年、「ひらら」をオープンさせた。同法人の西田勇理事長(79)は「『廃校になった校舎を蘇らせたい』という、菟田野の人たちの思いがこもった校舎です」と語る。
市の新しい観光名所として年間約2万人が訪れる一方、旧宇太小の同窓会も頻繁に開催。仕事などで地元を離れた卒業生も、当時を懐かしんで遠方から訪れるという。同法人の徳田準一事務局長(59)は「菟田野の観光名所として、後世にも伝えられるものにしていきたい」と話す。
戦前の火災後も地域住民の力で再建され、廃校後も卒業生や地元の人々が再生に取り組み、守り続ける木造校舎。新しい観光名所であり、懐かしい校舎として、これからも地域に愛されるだろう。
(神田啓晴)
【ひとくちメモ】
奈良カエデの郷「ひらら」(宇陀市菟田野古市場135-2)では、約1・6ヘクタールの敷地に1200種3千本のカエデが植えられ、植物関係の本などを集めた「玩槭文庫展示室」、校舎を利用した「cafeカエデ」、特産品の展示室などがある。開園は午前10時~午後4時。入園は無料で、月曜定休。問い合わせは(電 0745・84・2888)。
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