【鹿角抄】「ただの日常がすばらしい」、がん患者の思い リレー・フォー・ライフに教えられ
一人の米国人医師が、がん患者の治療費のため寄付を募ろうと、24時間走り続けたことから始まったチャリティーイベント「リレー・フォー・ライフ」。日本では平成18年に初めて開かれ、県内では25年から有志でつくる実行委員会などの主催で毎年実施されている。今年も10月、県郡山総合庁舎グラウンド(大和郡山市)で約千人の患者や支援者、医療従事者らによって開かれた。
参加者はトラックを24時間、リレー方式で歩いた。がんの告知を乗り越えて生きていることを祝福するとともに、亡くなった患者をしのび、がんに負けない社会を作ることが目的だという。
参加者には、「病人としてではなく、普通に接してもらいたい」「仕事や結婚などにも世間の偏見がある」など、さまざまな厳しい現実に直面してきた人がいた。そのなかに、中学3年のときに急性リンパ性白血病と診断され、幾度も入退院を繰り返してきた京都女子大3回生、梅守里奈さん(20)の姿があった。
「告知されたときは信じられず、『死ぬんだ』と思って食べられず、動けず、病気を嫌った」と振り返った梅守さん。だが、その日の表情には、静かだが光輝くような明るさが感じられた。
「『ただの日常』が素晴らしいことだと感じられることは、病気になっていなかったら分からなかったと思う。がんになっても生き生きと生きることができると伝えたい」
1985年に米国で始まったイベントは今、世界25カ国で行われ、日本国内47カ所で開かれている。年間寄付金は約470億円と見込まれ、若手医師の育成や新薬の開発、患者らの心のケアなどに生かされるという。
イベントに参加した、母親が乳がんを患う女性はこう話してくれた。「いまここに母といることの喜びをかみしめながら歩いた。また来年ここで歩きたい」。
患者や関係者だけでなく、関わる人々に大切なことを教えてくれるリレー・フォー・ライフ。2人に1人ががんを患う現代、社会のあり方を改めて考える機会にもしたい。(山﨑成葉)
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