被爆体験を後世に伝えたい 生駒のシニア劇団が3月5日に朗読劇
生駒市のシニア劇団「らくらく演劇塾」が来月5日、原爆投下で命を奪われた女生徒を描く朗読劇「広島第二県女二年西組」を上演する。原作はノンフィクション作家の関千枝子さん(83)が実体験をもとに執筆。朗読劇の演出を務める「劇団大阪」代表の熊本一さん(75)は、「71年前、実際に起きた出来事を決して風化させてはならない」と力を込める。
「あっBが…」。せりふとともに劇団員らが体を寄せ合い、空の一点を見つめる。B29爆撃機から舞落ちるパラシュートを指さした瞬間「一筋の閃光とともに少女たちの目はくらみ、爆風に吹き飛ばされた」―。
真剣な表情で練習に励んでいる「らくらく演劇塾」は、主婦やシニア層を中心に11年前に結成。現在20人が所属し、年1回の「劇場公演」や老人ホームでの「でまえ公演」を行っている。
第11回公演となる本作は、県立広島第二高等女学校2年西組の女生徒たちが体験した実話をもとにした作品。昭和20年8月6日、女生徒たちは空襲による延焼被害を防ぐため、建物を取り壊す「建物疎開」の作業中に被爆。現場にいた女生徒39人中、38人が犠牲となった。作者の関さんも同じ組の生徒だったが、この日は体調不良で自宅で休んでいたため命拾いした。
戦後、新聞記者となった関さんは遺族らに取材し、昭和60年に「広島第二県女二年西組-原爆で死んだ級友たち」を出版。演劇用のシナリオも作成し、当時から親交のあった熊本さんに手渡していた。昨年12月、戦後70年の節目に熊本さんが朗読劇の上演を関さんに提案、大阪のシニア劇団による初上演が実現した。
今回、生駒での上演は熊本さんが演出を担当する。「今日一緒に机を並べている友が、明日みんな死んでしまう…それがどんなに恐ろしいことか想像してごらんなさい」。重く辛いせりふが、演者たちの迫真の表現とともに胸に迫る。長崎市出身で、疎開していたため被爆を免れたという熊本さんは「戦争経験者が年々減る中、私たちは演劇による語り部として、戦争と原爆の事実を後世に伝えていきたい」と話す。
朗読劇「広島第二県女二年西組」は3月5日、午前11時と午後2時半の2回、生駒市北コミュニティセンターはばたきホールで上演。観覧料500円。全席自由。チケットの購入や問い合わせは同センター(☎0743・71・3331)。
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(関西のニュースは産経WEST http://www.sankei.com/west/west.html)