昭和50年代後半の中国紀行をつづる 奈良芸術短大の前園教授が本出版
元橿原考古学研究所職員で、奈良芸術短大(橿原市)教授の前園実知雄さん(69)が、北京留学時代(昭和56~58年)に中国各地を旅した思い出をつづった「中国歴史紀行」(253ページ、新泉社)を出版した。遺跡を訪れたときの感動や、当時の中国社会の様子などがつづられている。
前園さんは橿考研職員時代に所内公募で北京大学などに留学し、考古学を研究。その傍ら古都・洛陽、蜀の都・成都、シルクロードの要衝・トルファン、黄河文明を受け継ぐ殷墟、高原の街・青海省西寧など、中国各地を訪れた。
当時の中国は「文化大革命」の傷跡が残り、日本から訪れる人も多くなかった時代。外国人に開放されていない場所も多かったという。そんな中、成都では前蜀の初代皇帝・王建の墓や出土遺物を見学。玉製の大帯や哀冊(弔文を記した品)など唐・五代文化の粋を表した遺物を前にし、「来華直前に太安万侶墓誌の発掘調査報告書をなんとか出版できた私にとって、特に感慨深い品だった」とつづっている。
訪問先での地元の人や外国人旅行者との交流、街の様子などについても詳述。西寧については、留学から16年後の平成11年、日中共同の青海省シルクロード調査の協定締結のため再び訪れ、「省都はみごとに様変わりしていた」と、改革開放で発展した街の変化に驚いたことを紹介している。
前園さんは留学後も50回以上中国各地を訪れ、多くの中国人と交流。「政治的にはさまざまな軋轢はあったが、私たちの間にはなんのわだかまりもない。お互いに相手の立場や気持ちを思いやる心があれば、問題はそれほど深刻にはならないと確信している」としている。
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