深刻 家庭内の高齢者虐待 116件 被害の7割は女性
県は、平成26年度に県内で家族や親族による高齢者への虐待は前年度より1件多い116件だったと発表した。被害者の7割以上が女性で、6割以上は認知症だった。
県によると26年度に家族や親族、同居人など高齢者の世話をしている人の虐待を疑う相談や通報は235件あり、116件(119人)が虐待と認定された。
被害者は男性が24人、女性が95人と圧倒的に女性が多く、年齢は85~89歳が最も多かった。また、46人は日常生活に支障がある認知症の人だった。
虐待の種類は「身体的虐待」を受けた人が81人と最も多く、続いて「心理的虐待」が52人、「介護・世話の放棄、放任」が26人、本人の合意なくお金の使用を制限するなどの「経済的虐待」が20人だった。
虐待を受けたのは「息子」からが最多の58人。次に「夫」25人、「娘」21人だった。63人が被害者と加害者だけで同居していた。
一方、26年度の県内の介護施設や介護サービス事業者の職員による高齢者虐待の相談・通報件数は17件。うち、4件が虐待と認定された。前年度より3件の増加。県の担当者は「高齢者虐待への意識が高まり、施設や医療機関からの通報件数が多くなっている」と分析している。
追い詰められる介護者の支援重要
県によると、県内の家庭内の虐待件数はここ数年約100~120件とほぼ横ばい状態だ。県地域包括ケア推進室の担当者は「高齢者虐待と認定された家族の中には、『虐待をしている』という自覚がなく、気付かずに虐待をしてしまっている場合が多い」と指摘する。特に認知症高齢者の介護では話が伝わらないことにイライラし、「かっとなって、つい手をあげてしまう」というケースが多くみられるという。
また、長年の介護疲れで追いつめられ、虐待に至ってしまうケースも。介護「する側」と「される側」のみが同居している〝密室介護〟も要因の1つだ。
県は「虐待する側も、これまでの人間関係や経済的な困窮、相談する人が身近にいないなど、さまざまな問題や事情を抱えている」と指摘。
「虐待をしている人を加害者と決めつけず、介護保険サービスなどの制度をうまく活用し、支援する方法を考えることが大切だ」とし、高齢者虐待早期発見の手がかりとなるチェックリストを掲載したチラシを作成した。「気になることがあれば市町村や地域包括支援センターに相談してほしい」と呼び掛けている。
チェックリストの「高齢者の様子」は、体に不自然なあざや傷があり、けがが治療されていない▽汚れた服や季節に合わない服を着ている▽デイサービスなどを利用したとき「帰りたくない」などの発言が頻繁にある▽必要と思われる受診や介護保険サービスが家族の理由でなかなか受けられない―など。
一方、「介護者の様子」では、高齢者に面会させない▽部屋の中が非衛生的、異臭がある▽介護疲れや病気などつらい様子がうかがえる▽近所付き合いがなく、怒鳴り声やうめき声が聞こえる―などが挙げられている。
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