「負げでたまっか!」 川西町の田川さんが復興祈る陶芸作品展 東日本大震災5年
11日で発生から5年を迎えた東日本大震災。川西町の田川進さん(76)は、被災地の復興を祈りながらこの5年間に制作した陶芸作品展「3・11から5年 私の心の軌跡」を、大和郡山市のギャラリー「おぼろ月夜」で開いている。拳を強く握り締めた花瓶「負げでたまっか!」や、穏やかに流れる水を表現した作品など、被災地への思いがこめられており、田川さんは「できれば被災された方に見てもらい、語り合いたい」と話している。
定年まで製薬会社の研究員として勤めた田川さんは「顕微鏡生活から抜け出したくなって」、平成12年ごろから独学で陶芸に挑戦。山添村の山中に工房「健ゆう会」を開き、制作活動に取り組んでいた。
固体、液体、気体と柔軟に変化する「水」の様子が「自分の心や人生の変化に似ている」と、テーマに「水」を選んだ。そんな中で23年3月11日に起きた東日本大震災。テレビで見た車や家が津波に流される光景に、「穏やかで、人間に『恩恵』を与えるものだと思っていた」という「水」のイメージが根底から覆された。
しばらく作陶する気持ちにもなれなかったが、同年夏から自分の感情を制作にぶつけた。高台への避難を呼び掛ける様子を表現した「お~い、ここにおるぞ~」には、暴風で翼を痛めながらも仲間を探す鶴と、海岸の岸壁からそれを見守る友鶴が描かれている。
「震災に負けたらアカン」という気持ちをこめた「負げでたまっか!」は、田川さんが自分の拳を握りながら作った花瓶。「震災から3年間は水への恐怖心から、穏やかな水を表現する作品は作れなかった」と田川さんは話す。
5年目を迎えた今、「優しい作品を作るようになれた」という田川さんが取り組んでいるのは、緩やかな波に流れる折り鶴を表現した作品。「5年前は拳を自分に向けていたが、今は太陽に向けられるようになった。被災された方と作品を通じてお話ができれば」と話した。
31日まで。開館は午前10時~午後4時。入場料無料。火・金曜日と31日は田川さんも会場にいる。問い合わせはギャラリー「おぼろ月夜」(☎080・3315・5409)。
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