「民話楽しんで」、厳選の76話を本に 元校長の中上さん
民話の研究をライフワークにしている奈良市の元小学校長、中上武二さん(72)が県内に伝わるさまざまな民話をまとめた「大和の民話」の「奈良県篇」「奈良市篇」計2冊を出版した。合わせて76話が紹介されており、中上さんは「多くの人に民話を楽しんでもらいたい」としている。
中上さんは野迫川村出身で、元近畿民俗学会員。奈良市や十津川村内の小学校で38年間教壇に立つかたわら、休日などを利用して県内各地を尋ね、地域に伝わる民話を調べた。
出版した「大和の民話」は、平成10年から22年まで「月刊大和路ならら」の連載で紹介した136話のうち76話を選び、まとめた。
奈良県編の箸墓(桜井市)にかかわる民話では、長者の男が貧乏な暮らしを願い、「箸を捨てると天罰で貧乏になる」という言い伝えから毎日、箸や膳などを捨て、それが積もって箸墓になったという話や、大峯山寺(天川村)では千手観音の功徳を説いた千手陀羅尼を唱えながら修行していた聖人の男が、深い谷で大蛇の群れに襲われそうになったが、鬼に助けられる-という話などが紹介されている。
中上さんが民話の研究を始めたきっかけは、母校の奈良教育大学で民俗学を学んだこと。民俗学者で、同大教授をつとめた林宏さんに師事した。
出版された2冊には多くの挿絵も。奈良市立春日中学校教諭の杉本哲也さんらが担当した。
中上さんは本を奈良市立中央図書館や、県立図書情報館に寄贈。「今回の出版はこれまでの調査・研究の集大成。多くの方にご協力いただき、感謝しています。いろいろな話を収録しているので、興味のあるものを読んで、楽しんでほしい」としている。
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