「市議に600万円渡した」 天理市のメガソーラー疑惑 情報提供の見返りか
天理市の市有地で進められている大規模太陽光発電(メガソーラー)の建設事業をめぐり、市の入札で事業者に選ばれた一般社団法人(大阪市)の元相談役が、天理市の男性市議(66)から入札情報を教えてもらった謝礼として「現金600万円を渡した」とする陳述書を、民事訴訟で提出していたことが3日、捜査関係者への取材で分かった。3日、市役所を家宅捜索した大阪地検特捜部は、市議が市の担当者から情報を聞き出し、漏洩した疑いがあるとみて市議の自宅も捜索した。
特捜部は法人の関係者らから任意で事情を聴いており、実態解明に向けて押収資料の分析を進める。
天理市は平成25年5月、所有する山間部の遊休地約43ヘクタールを民間に貸し出してメガソーラー施設を誘致することを計画し、事業者を公募。同年8月2日の期限までにこの一般社団法人と別の業者の2社から応募があり、提案内容を審査する「プロポーザル方式」の入札の結果、20年にわたって年4300万円の賃借料を支払うとした法人が選定された。
関係者によると、法人の元相談役は大阪府警のOBで、法人と市議との仲介役だったとされる。市議は公募期限の直前、担当の市幹部から、ライバル企業が提示した賃借料を聞き出し、法人の別の幹部らに漏洩。法人側はライバル企業の提示額を若干上回る賃借料に修正したという。元相談役はその後、事業の進め方をめぐり法人側と対立、25年11月に解任された。
法人幹部は翌年、元相談役に600万円の貸金返還を求めて大阪地裁に提訴。訴訟で元相談役は「法人幹部から受け取った600万円は市議に報酬として渡した」とする陳述書を提出し、借りた金ではないと訴えた。
一方、法人幹部はあくまで元相談役に貸した金だと主張。市議への資金供与は「犯罪行為になりかねない」と否定した。訴訟は昨年7月に取り下げられた。
元相談役は産経新聞の取材に「市議に現金を渡した」としながら、訴訟での主張とは異なり、市議に貸した金で賄賂ではないと説明。「借用書もあり、不正ではない」と話した。
天理市によると、法人はその後、事業の権利を九電工とオリックスの合弁会社に売却。同社が来年2月の発電開始を目指している。
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