地酒と地紅茶のハーモニー 奈良の新たな魅力発信へ 「わらしべの想い」発売
清酒発祥の地で、茶の生産量全国6位の奈良。その〝地域力〟を生かし、県産紅茶と地酒で作った紅茶リキュール「わらしべの想い」が開発された。日本酒と紅茶それぞれの味わいが絶妙なバランスで口の中に広がる逸品で、関係者は「新たな奈良の魅力発信につながれば」と期待している。(神田啓晴)
■緑茶では埋没
企画したのは、県内の酒造会社などでつくる「奈良のお酒を推進する実行委員会」委員長を務める酒類卸「泉屋」(奈良市)社長の今西栄策さん(45)。実行委は平成26年春から、季節に合わせた奈良の酒企画を展開してきたが昨夏、今西さんは「冷酒シリーズの3回目は清酒以外で」と考え、奈良市都祁の茶農家「福光園」15代目、福井周一さん(38)に「大和茶を使ったリキュールを開発したい」と相談を持ちかけた。
だが、緑茶と日本酒のリキュールは京都の宇治茶を使った商品がすでに販売されていた。福井さんは「大和茶では類似品となり、埋没してしまう」と指摘、「これはどうだろう」と提案したのが、自身の茶園で生産している地紅茶だった。
■香りの高さ格別
化学肥料や農薬を一切使わずに育てた茶葉で作る地紅茶は、香りの高さが格別。その味わいに驚いた今西さんは、紅茶のリキュールに計画を変更、桜井市の老舗蔵元「今西酒造」に依頼し、共同開発に取り組んだ。やや辛口の上撰酒と地紅茶をブレンドし、完成した。
「わらしべの想い」は紅茶らしい薄茶色。冷やしてロックやストレートで飲むことを想定し、アルコール度数は10%だが、ほんのり甘いさっぱりとした味わいで、日本酒が苦手な人でもカクテル感覚で飲める。
「奈良の良いものを届けたい」と取り組む人々とのつながりで、1年がかりで誕生したことから、商品名は「わらしべ長者」になぞらえて「わらしべの想い」と命名された。
■かつては紅茶の名産地
あまり知られていないが、奈良は紅茶生産の歴史も古い。戦前から生産に関する記録があり、波田野村(現山添村)史には、昭和33年にロンドンで開かれた全世界紅茶品評会で、村の紅茶が最優秀賞を受賞したとの記述がある。
当時は森永製菓(東京都)も大和高原に紅茶工場を設置。だが、昭和46年に輸入が自由化されると、生産は廃れたという。
「福光園」では現在、年約200キロの地紅茶を生産。本場にひけをとらない高品質の紅茶を目指し、有機JAS認定も取得している福井さんは、「『奈良にうまいものなし』といわれる中で、全国に『おいしい』と誇れる商品ができたと思う」と自信をみせる。
今西さんも、「『地元にこんないいものがある』ことを、お酒を通じて今後も提案していきたい」と意気込む。地酒と地紅茶という新しいコラボが、奈良の新しい「うまいもの」の魅力発信につながるか、今後の展開に期待したい。
「わらしべの想い」は500ミリリットル入り。税別1500円(参考小売価格)で、県内の小売店などで販売されている。泉屋のホームページはhttp://nara-izumiya.co.jp/index.htm
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