【鹿角抄】政府機関の地方移転 絵に描いた餅にするな
本当に実現するのだろうか―。安倍晋三政権が地方創生の一環として打ち出した政府機関の地方移転。近畿6府県では延べ約40機関の移転を提案しており、現在国によるヒアリングなどが行われているところだ。
「東京一極集中の是正」「地方活性化」など移転が意図する目的にはうなずける。人口減少が進む中、民間だけに地方移転を求めるのではなく、官側の〝努力〟も必要だ。ただ、どのぐらいの機関が移転できるのか。そして効果はあるのか…。肝心の実現可能性については未知数なところが多い。
これまでにも政府機関の分散構想はあったが、結局進まなかった。今回も「国会対応に不便」、「地方に移転しても結局東京へ出張する経費がかかる」など、中央省庁からは難色を示す声も出ているそうだ。荒井正吾知事も先月の定例記者会見で「あまり現実的ではないと思う。中央機関の移転ではなく、地方との連携強化というほうがありがたい」と辛口の意見を述べた。
そんな知事の言葉を反映してか、京都府は文化庁や国立美術館など8機関、兵庫県は日本貿易振興機構や観光庁など19もの機関を提案したのに対し、県は産業技術総合研究所の〝1本狙い〟。中でも生命工学を中心とした分野で奈良先端科学技術大学院大学との共同研究や連携を視野にし、県が力を入れている漢方分野での発展にもつなげたい考えだ。
「1つの機関を丸ごと移転するというのはハードルが高い。研究の中の一部門に絞るのは実現可能性を考えてもメリットがある」と担当者。政府は来年3月の移転正式決定に向けて自治体だけでなく、対象機関や省庁などから意見を聞き、12月に移転の可否に関する対応方針をまとめる。
国の意気込みや本気度はよく分からないが、構想が動き始めている限り、県は奈良に移転するメリットを明確に打ち出し、ライバルたちに勝たなければならない。「現実的な提案」で実現に結びつける力が求められていると思う。結局国に振り回され、「絵に描いた餅」で終わることがないように…。(有川真理)
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