奈良伊賀地域で産経新聞の購読試読・求人案内。

産経新聞 奈良県伊賀地区専売会産経新聞 奈良県伊賀地区専売会

産経新聞グループ各紙のご購読はこちら 0742-24-2214

専売会について専売会について各専売店の紹介各専売店の紹介地域貢献地域貢献求人内容求人内容購読・試読サービス購読・試読サービス

sanbai-02.jpg

【まちの近代化遺産・再録】五新鉄道 歴史に翻弄された幻の鉄道跡


 五條市と和歌山県新宮市をつなぐ新たな鉄道路線として、地元の大きな期待に後押しされ、大正時代に構想がスタートした「五新鉄道」。五條市の中心部から旧西吉野村、旧大塔村方面に国道168号を走ると、田園や山間のあちこちに、鉄道敷設のため建設され、残された巨大な橋脚やトンネルが現れる。

五條市中心部でも、国道を渡る部分だけ途切れた高架橋が残っている

五條市中心部でも、国道を渡る部分だけ途切れた高架橋が残っている

 一番簡単に見ることができるのは、五條市新町の国道24号にある高架橋だ。以前は国道をまたぐ構造になっていたが、現在は道路の上の部分は取り払われ、両脇に遺構が残されている。ほかにも、特に旧西吉野村では橋やトンネルがあちこちに残されている。

 県南部は、近代以前から木材や鉱石を産出していた。このため、資源を運搬するための鉄道建設が持ち上がったのは、大正8年だった。

 この年、現在の五條市などを管轄する「宇智吉野郡会」で、鉄道建設に向けて国会陳情することを議決。9年には地元に期成同盟会も結成されて運動は大きく盛り上がり、11年には鉄道敷設原案が作られるなど、実現に向けた議論は進んでいく。

 とんとん拍子で話が進んだ背景について、五條市立五條文化博物館の山本望実学芸員は、「当時は近代化を牽引(けんいん)するものとして、大量輸送できる鉄道が各地でばんばん敷設されていたため」と説明する。

 しかし、12年に関東大震災が発生したことや、政府の緊縮財政方針で延期が続く。昭和12年に日中戦争が始まって軍事予算が膨大になると、14年に起工式が行われたものの、戦争の激化で工事は中断。戦後に再び工事が進められ、五條市内の一部区間で線路を敷設する路盤が完成したが、この路盤に鉄道ではなくバスを通す案が浮上するなど、混乱した。

 自家用車の普及が進み、建設主体の国鉄が経営不振に陥る中で56年、42億円が投じられた工事はついに中止が決定。平成2年には期成同盟会も解散した。山本学芸員は「国策として進められた鉄道事業なので、国の動向や社会情勢に大きく左右され、開通しないまま〝幻〟となってしまった」と解説する。

 完成している路盤は、路線バス専用道として40年から旧国鉄バスがバスを運行。現在は奈良交通が引き継いで運行している。

森林地帯に突然巨大な構造物が現れる

森林地帯に突然巨大な構造物が現れる

 しかしそれも、トンネルの老朽化で安全が確保できなくなったことから、26年10月から通常の国道を通るルートに変更。五新鉄道跡を通るバス路線もなくなることが決まった。

 近代化を象徴する鉄道だが、それだけに五新鉄道は戦争や自家用車の普及など、日本の近代がたどった歴史に翻弄され続けた。今も残る高架橋やトンネルを訪ねると、もし開通していれば、沿線や駅周辺には今とは違う光景が広がっていたのだろうか、と考えさせられる。(平成26年10月1日掲載)

※平成26年9月に奈良版でスタートした「まちの近代化遺産」を再録します。文中の年齢や肩書き等は掲載時のままです。

【関連記事】

幻の「五新鉄道」、路線バスも“幻”に…専用道閉鎖、お別れイベントで偲ぶ 奈良・五條

バス版「葬式鉄」でにぎわい 「五新鉄道」跡走るバス、9月末で終了

“幻”の「五新鉄道」 知っている人はかなりの通です

【まちの近代化遺産】明治の和風〝迎賓館〟 菊水楼

【関西の議論】「五新鉄道」は永遠に…鉄道跡を行くバスはきょう限り、思い出は巨大な橋脚とともに

【まちの近代化遺産】信貴山への架け橋「開運橋」、まちに溶け込んだ鉄橋

(関西のニュースは産経WEST http://www.sankei.com/west/west.html)

求人情報求人情報
購読・試読のお申込み購読・試読のお申込み
お問い合わせお問い合わせ

産経新聞各紙
産経新聞産経新聞
サンスポサンスポ
Business iBusiness i
夕刊フジ夕刊フジ

グループ各紙
月刊TVnavi月刊TVnavi
MOSTLYMOSTLY
正論正論
週刊ギャロップ週刊ギャロップ

産経でんき産経でんき


読もうよ新聞読もうよ新聞

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。