「住民に信頼されることが基本」、近畿の警察官表彰の天理署・鎌塚警部補
「地域住民に信頼されることが警察官の基本。いろんなことを話してもらえる警察官を育てたい」。優秀な警察官を表彰する「近畿の警察官」(産経新聞社提唱・奈良県信用金庫協会協賛)を受賞した天理署地域課の鎌塚春隆警部補(55)はこう語り、決意を新たにした。36年余りの警察官人生の約20年間を地域警察部門で勤めてきた根っからの〝地域警察官〟。19日に大阪市の大阪国際交流センターで、ほかの近畿5府県の警察官とともに表彰される。
野迫川村出身。村をパトカーで巡回する警察官や、刑事ドラマを見て「かっこいい」と警察官を志望。昭和54年に拝命後は、交番勤務を経て機動捜査隊など、捜査部門に従事したが、父親の急死や母親の末期がん宣告などを機に、地域に密着した「地域警察」を志望。桜井署や十津川署の駐在所勤務を経て巡査部長に昇進した。
西和署の平群北駐在所に異動して約2年半がたった平成16年11月17日。奈良市立富雄北小1年の有山楓ちゃん=当時(7)=が誘拐、殺害される事件が起きた。一報が入ったときは、署での当直勤務中。十分な情報もないままパトカーに飛び乗って現場へ。現場保存や警備に当たった。
事件が社会に与えた衝撃は大きかった。人通りが少なく、田んぼに囲まれた遺体遺棄現場には、発生直後から多くの人が花やお菓子を供えに訪れた。だが、花も時間がたてば枯れ、時には動物が食べ物を荒らすことも。現場を見回るとき、そんな〝変化〟が気になった。
「遺族が見ると嫌だろうし、お供えに対する周辺住民の感情が『疎ましい』に変わってはよくない」
そう思い、巡回勤務の度に必ず現場に足を運んできれいに整理した。お供え物の内容に応じて、県警被害者対策班を通じて遺族に届けてもらったり、近隣の寺でていねいに供養してもらうこともあった。
クリスマスにはサンタクロースのぬいぐるみ、ひなまつりには人形、夏休みにはメッセージが書かれた「日記帳」、文房具…。全国各地から届けられたもののほか、地元住民が散歩するたびに供えることも。「事件は風化していない」と感じる一方、「そうした思いを維持してもらうため、自分にはやるべきことがある」と、自治会や学校などで「地域の安全」についての講習も行った。
6年余りになった西和署から異動することになった20年3月末。異動の前日に、楓ちゃんの遺族が平群北駐在所までお礼を言いに来てくれた。「見てくれていたのか」と、改めて「地域警察」の仕事にやりがいを感じた。自分が異動するまで、現場に絶えることがなかった供え物。後任には、自分が心を込めて取り組んできたことの大切さを懸命に伝えた。
22年からは地域指導係になり、若手の育成にも努めている。「いくら巡回して警戒しても、警察官の数には限りがある。警察が知らない事案を話してもらうことで、検挙につながることもある。いろんなことを話してもらえる警察官を育てたい」と力を込めた。
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