千田稔さん渾身執筆100回 人気連載企画「古代天皇誌」が本に
神武から桓武まで古代50代(欠史8代含む)の天皇像に迫る、歴史地理学者で県立図書情報館長、千田稔さんの著書「古代天皇誌」が、東方出版から発刊された。産経新聞奈良版に平成24年~27年に100回にわたって掲載されたもので、千田さんは執筆中、「なぜ大和なのか。天皇たちを引きつける特別な力があったのではないか」という思いが離れなかったという。
古代、歴代の天皇たちは宮を各地に移したが、奈良盆地をあまり離れることがなかった。千田さんはこのことに関心を抱き、天皇一人一人についてひもといていったという。
著書では、神武天皇について「1人でなく複数人物の寄せ集めか」、景行天皇は「倭は国のまほろば」、天武天皇は「大和平定し飛鳥に凱旋」「道教の神仙思想に深い関心」などといったテーマで紹介。
聖武天皇について記した11のテーマのうち、「仏教のもとで行う国家統治」では、紫香楽宮と甲賀寺が距離をおかずに計画されたことに着目。聖武天皇は、斑鳩に宮と寺を並べた聖徳太子の政治思想を取り入れようとしたと解釈した。大仏造立の詔から「国家統治を仏教によってではなく、仏教の下でするというのです」とし、「律令による古代天皇制の大きな変革」と指摘している。
あとがきでは「古事記」「日本書紀」にある「倭は 国のまほろば 畳づく 青垣 山籠れる 倭し麗し」の「うるはし」について「日本書紀」の用例から、「神々しい心象風景を思いおこさせる。とすれば、まほろばの倭は神の坐す荘厳な土地」と推測した。
千田さんは「当時の天皇は神まつりか仏教に傾くかだが、大和という土地に力があったのだろう」と話している。1冊2千円(税別)で、全国の主な書店で販売されている。
【関連記事】
【古代天皇誌】欽明天皇(1) 仏教が伝わり、蘇我氏の権力が芽生える政治状況
(関西のニュースは産経WEST http://www.sankei.com/west/west.html)