友と生きた日々歌う 難病の阪口さん 夫婦デュオ「真ちゃん・和ちゃん」
身体の筋力が衰える「脊髄性筋萎縮症(SMA)」を生まれつき患い、電動車いすに乗りながら音楽活動を続ける女性がいる。大和郡山市の阪口和世さん(53)。10年前に夫の真治さん(51)と夫婦デュオ「真ちゃん・和ちゃん」を結成。「亡くなった友達と一緒に生きた日々を伝えたい」と、地元の小学校などで歌声を届けてきた。22日、活動10周年を記念するコンサート「まな板の上の恋」が同市で開かれる。
「母ちゃん 私も遊びたい みんなと一緒に遊びたい/雪の中を一度でええから 走り回りたい」。和世さんが初めて作詞したのは、中学1年のとき。ライブの定番曲となっている「ゆき」には、当時入所していた奈良市内の筋ジストロフィーの専門病棟で、ノートに走り書きした幾多の思いを歌詞につづっている。
SMAは脊髄の運動神経が変異して起こり、筋力低下や呼吸不全などの症状を引き起こす。日本では乳児から小児期に10万人あたり1~2人が発症。重症度が最も高いI型は、人工呼吸器がなければ95%が1歳6カ月までに死亡するとされ、現在も治療法が確立していない難病の1つだ。
幼少期から27歳まで病院で過ごした和世さんは、これまでに50人もの友人の死を見てきた。「僕が先に死んだらおまえが悲しむやろ。だから僕は先には死なん」。そう誓った友人は、27歳の若さでこの世を去った。別れの悲しみや死の恐怖は絶えずつきまとったが、大好きな音楽を生きる励みに、闘病生活を続けてきた。
夫の真治さんと出会ったのは24歳のとき。当時、京都大3年だった真治さんが、友人に誘われて病棟の合唱コンサートに訪れたのがきっかけだ。患者の外出介助ボランティアとして病棟に通ううち、互いにひかれ合って交際を開始。「中途半端な付き合いはしたくない」(真治さん)と自身の両親を説得、交際6年目に結婚した。
10年前、夫婦で行きつけのライブカフェの店主に、「まな板の上の鯉になったつもりで2人で歌ったらどうや?」と勧められ、ライブ活動を開始。地元の喫茶店で2カ月に1度、自主ライブを開き、小学校や老人会、まちのイベントでも歌うようになった。
当初は、「亡くなった友達の分まで生きなあかん。友達がやれんかったことを自分がやろう」と思っていた和世さんだが、別れを繰り返すうち、心境は変わっていったという。
「友達一人一人はかけがえのない存在。私が友達の代わりを生きることはできへん」。友人の分まで生きるという考えは、ともすれば「おこがましいことなのかもしれない」。
以来、自分ができるのは「ともに生きていた友達との日々を歌で伝えること」と思うようになった。「君と見上げたあの空は 今も心に青く/時代の風が流れても 思い出だけにはしたくない/果てなく高い空だけど 僕らの青春だから」。楽曲「空」は、別れた友人の存在は過去のものではなく、形を変えて今も和世さんの中に生き続けていることを思い作詞した。
10年間、活動を続けさせてくれた周囲の支えに「何度ありがとうを言っても足りない」と和世さん。何気ない日常に「今日」という日があることを喜び、思いは天上の友人にも届くと信じ、これからも歌を奏で続けていくつもりだ。
10周年記念コンサート「まな板の上の恋」は22日、大和郡山市のやまと郡山城ホールで午後2時開演。前売り千円、当日1300円で全席自由。チケットの購入は、やまと郡山城ホール(☎0743・54・8000)。
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