【鹿角抄(コラム)】手軽に見られる映画館を、奈良県民は渇望している
「なら国際映画祭」の各部門の受賞者と河瀬直美さん(左端)、審査委員長の三上博史さん(右端)=奈良市
9月17日~22日まで開催された「第4回なら国際映画祭」。6日間で3万人超と、奈良県内外から多くの来場者が集まり、大盛況で幕を閉じた。記者も開幕式と閉幕式を取材した。運良く、東吉野村を舞台にした「東の狼」のプレミア上映も観賞できた。野外で虫の声や、そよ風が吹く中での映画鑑賞はぜいたくで、非日常を体験できた。
もともと映画観賞が趣味で、学生時代には年間100本は見ていた。だが奈良に来てからというもの、映画とは縁遠い生活になってしまった。奈良市内には映画館がなく、一番近くて大和郡山市ということも要因の一つだろう。車を出さなければ映画が見られないのはなかなか寂しいもので、映画が〝手軽〟でなくなってしまったように感じている。
なら国際映画祭のエグゼクティブディレクターの河瀬直美さんは、「奈良に映画の文化を根付かせたい」と話していた。確かに、映画祭では大人から子供まで、純粋に映画を楽しんでいたと感じる。奈良県内では今後映画の撮影が行われるなど、奈良に映画文化は確実に根付いてくるのではないだろうか。
しかし、映画祭は奈良市から補助金が全額カットされ、その上、奈良市内には映画館がない…となると、せっかく芽吹き始めた〝文化〟に水を差しているようだ。
最近では「シン・ゴジラ」や「君の名は。」など、邦画も好調で話題作もめじろ押し。また、京阪神間ではミニシアターが注目を集め、商業ベースに乗りづらくシネマ・コンプレックスでは上映しない映画も、若者を中心にファン層を広げているという。潜在的な映画ファンは確実にいるというのに、もったいないではないか。
近年「3D」や、座席の揺れやにおいまで体感できる「4D」など観賞スタイルも選ぶ時代になった。多様化する中で、映画をより身近に、手軽に見られるような映画館を、奈良県民は待っているのではないだろうか。 (石橋明日佳)
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