仏像写真家・永野太造の全貌探る 帝塚山大がガラス乾板7千枚調査
奈良の仏像を撮り続けた戦後の代表的写真家の一人でありながら、全貌が知られていない永野太造(ながの・たぞう)さん(1922~90年)が残した作品の調査・研究に、奈良市の帝塚山大学奈良学総合文化研究所と同大学付属博物館が取り組む。
今秋、仏像が写ったガラス乾板(感光材料)約7千点の寄贈を受けたためで12、13日に県文化会館で展示会も開催。仏像写真の流れをつくった写真家に光をあてる。
永野さんは大阪市生まれ。奈良国立博物館近くで古美術写真に携わった永野鹿鳴荘を継ぎつつ、写真を学んだ。文化財調査に同行するなどして奈良の仏像を多く撮影。写真は「奈良六大寺大観」や「大和古寺大観」などの美術書で掲載されたほか、東大寺法華堂の月光菩薩像の作品は、観光ポスター「奈良大和路」シリーズで使われ、世界観光ポスター展で受賞した。
だが、戦後に仏像などを撮影した写真家、入江泰吉や土門拳らに比べ、その活動ぶりは知られていない。帝塚山学園は昨年開いた展示会などをきっかけに、遺族からガラス乾板約7千点の寄贈を受けた。貴重な作品も多いとみられ今後、整理、分類して調査するとともに、画像のデジタルアーカイブ化も目指すという。
同博物館の服部敦子学芸員は「全貌を明らかにし、多くの人に知ってもらいたい」、帝塚山大学の岩井洋学長は「新たな発見も期待され、広く発信したい。これを機会に『奈良学』を深めたい」と話している。
【関連記事】
カエデの郷「ひらら」に蔵書1万冊の文庫 奈良・宇陀のカメラマン寄贈
「1枚の写真が国家を動かす」 フォトジャーナリストの広河さん熱弁 人権・部落解放研究集会
(関西のニュースは産経WEST http://www.sankei.com/west/west.html)