幻の五新鉄道を地域おこしに NPO法人がブランド化も模索
五條市と和歌山県新宮市を結ぶ鉄道として計画されたが完成しなかった「五新鉄道(五新線)」を核に地域活性化を進めようと、産学と地元有志がNPO法人「五新線再生推進会議」を設立、ブランド創出や植樹活動などを計画している。理事長の奈良先端科学技術大学院大学特任教授の新名惇彦さん(73)は「幻の鉄道に光を当て、五條市の地方創生、奈良南部の活性化に寄与したい」と意気込んでいる。
五新線は沿線の木材輸送を目的に、五條から和歌山県新宮市まで100キロ超を結ぶ国鉄路線として計画された。昭和12年に着工、戦時中は工事が中断されたが、34年に五條~城戸(五條市西吉野町)間11・5キロの路盤工事が完成。だが、経済社会情勢の変化などでバス路線化が浮上、40年から五條~城戸間で国鉄バスの運行が始まった。平成14年からは奈良交通が事業を引き継ぎ、路線バス専用道となったが、26年9月にこの路線も廃止された。
新名理事長らは、「五新線に寄せられた先人の願いを、21世紀の社会背景に則したかたちで、地方創生のモデルとする」ことを目指し、24年に任意団体を設立。これを母体にNPO法人「五新線再生推進会議」を設立した。
同会議では、五新線跡に木のおもちゃの電車のレールを敷いて遊ぶイベントなどを実施。周辺に桜の並木を造る植樹活動や、年間の気温がほぼ一定というトンネル跡を活用したきのこ栽培、「五新線ブランド」創出活動なども計画している。地域を支える後継者育成に向け、メンバーら第一線の研究者が講師となる「GOJO大学」も開催予定だ。
新名理事長は「郷土を愛する子供や若者を育て、五條、県南部の永続的な活性化に役立ちたい」と話した。
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(関西のニュースは産経WEST http://www.sankei.com/west/west.html)