「坊さんに厳しく、庶民に優しい」 西大寺の叡尊上人とは? 木造坐像国宝指定へ
文化審議会の答申で11日、重文から国宝に昇格することになった西大寺(奈良市)の木造叡尊(えいそん)坐像(興正菩薩坐像)と像内納入品。同寺の彫刻では初の国宝指定で、寺は「興正菩薩叡尊の生きざまや教えに意味があるということ」とし、戒律(生活規律)の普及や社会救済活動に尽くした上人について顕彰、発信する機会ともなりそうだ。
叡尊は鎌倉時代の奈良に生まれた。密教や戒律を学び、東大寺で自誓受戒。西大寺を拠点に各地で戒律の普及に努め、寺院の復興を進める一方、庶民の救済活動を展開した。現在も西大寺を総本山とする真言律宗の宗祖としてあがめられている。
今回、答申された坐像(像高88センチ)は、叡尊が80歳のときに弟子たちが仏師、善春に造らせたというもの。鎌倉彫刻らしくリアルな顔だ。
西大寺の松村隆誉執事長は「坐像の風貌は思索にふけるようなタイプを感じさせる。静かだが、秘めた闘志をうかがわせる。今、戒律があるのはこの人のおかげで、真言宗の民衆化もされた」と語る。
叡尊は仏教を盛んにし民衆を救済する「興法利生」という理念のもと、社会から疎外された人たちを多く救ったほか、西大寺で行われている「大茶盛式」も当時、叡尊が茶を庶民に振る舞ったことがルーツと伝えられる。松村執事長は「坊さんに厳しく、庶民には優しく、豊かにしようとしただろう」と話す。
「南都真言律宗ぼさつの寺めぐり」を提案している寺の一つ、不空院(奈良市)も「叡尊について以前から広く知ってもらいたいと思っていた」とし、国宝昇格によってさらに発信されることを期待している。
叡尊坐像は西大寺の愛染堂に安置され通常は拝観が可能だが、現在は東京にあり、西大寺に戻るのは5月中旬以降の見込みという。
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