スマホ授業の教育効果に関心 4月から奈良市立一条高でスタート
スマートフォンを授業に活用する「スーパー・スマート・スクール(SSS)」の取り組みが、奈良市立一条高校で4月から始まる。平成32年の大学入試制度改革を控え、生徒の思考力や判断力を鍛えることが目的で、好きな講義を動画で繰り返し視聴できる「受験サプリ」も無償で提供。先進的な教育事例として注目されているが、校内から外部サイトへのアクセスを完全に遮断することはできないという課題もあり、成否が問われている。(桑島浩任)
大学入試センター試験では32年、「思考力」や「判断力」を中心に評価する制度改革を実施予定。奈良市は唯一の市立高校、一条高校での教育改革を計画し市、奈良教育大、リクルートマーケティングパートナーズの産学官連携プロジェクトとして、同校でスマホ授業導入を実施する。
仕掛け人は、東京都杉並区立和田中学校で、義務教育初の民間人校長になった藤原和博氏(59)。昨年4月から奈良市政策アドバイザーとして一条高校の教育改革に携わり、今春から同校長に就任する。
「スマホ導入」という真新しさについ目を奪われがちだが、教育改革の目的は「生徒の判断力や思考力を伸ばす」こと。そこで重要と位置づけられているのが、自ら課題を見つける「アクティブ・ラーニング」(AL)の導入だ。
昨秋から実施されているモデル授業では、藤原氏自らが教壇に立ち、「近鉄奈良駅前のマクドナルドの1日の売り上げはいくらか」など、実践的なテーマを生徒たちに話し合わせ、結論を発表させている。授業中、スマホが使われた場面はデータや資料などを調べるときぐらいで、ほとんど出番はなかった。
藤原氏は「スマホは教師と生徒、あるいは生徒同士のコミュニケーションを迅速化するためのツールであって、授業の主役ではない」とする。実際、スマホを使ったのは45分間の授業時間中、最後の5分間だけ。「今日の授業で身についたことは」との質問に対し、専用サイトに生徒が回答、一覧が表示されるというシステムを活用していた。
藤原氏は、「意見のやりとりが増えることで、生徒が授業に主体的に関わるようになる」とする。モデル授業に参加した同校2年の杉江奈美さん(17)も「普通は1、2人としか意見を交わせない。これならみんなのいろんな意見をすぐに見ることができるのでいいと思う」と話す。
こうした思考力・判断力の育成に取り組む一方、基礎学力強化のためのツールとして、リクルートの講義動画サービス「受験サプリ」を全生徒に無償提供。好きな講義を選び、繰り返し見ることができるサービスを自宅学習に役立てることで、総合的な学力アップを図るのがねらいだ。
だが、生徒のスマホを授業で活用することにはリスクもある。学内のWiFi(ワイファイ)に接続中は外部サイトへのアクセスは制限されるが、自分が契約する回線に切り替えれば、好きなサイトへのアクセスは可能だ。授業でのスマホ活用中、実は違うサイトにアクセスしていた…といった目的外使用を100%防ぐことはできないわけだが、藤原氏は「問題が起きたとしてもどう指導するかが重要。ネットリテラシーや社会性を教える機会ととらえるべき」と前向きに捉えている。
スマホを使った新しい教育手法には効果があるのか。4月からの同校での取り組みが、その試金石として注目される。
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