イスラム教徒にも味わってほしい ハラル認証ラーメン店、奈良町に開店
奈良市の旧市街地・奈良町に、県内初のハラル認証ラーメン店「じんにいや」がオープンした。築約90年の長屋を改修した店舗には、礼拝室や手足を清める清浄場所も設置。「和」とイスラムの文化が交わる異色の空間は、奈良の新たな観光スポットとして注目を集めそうだ。
トルコ製のモザイクランプが優しく灯り、アラブ音楽が耳に心地良い。樹齢100年の吉野杉で作られたというテーブルといすが、辺りにさわやかな香りを放つ。店を運営する株式会社「なら町長屋」代表取締役の湯脇智子さん(59)は「奈良町の穏やかなときの流れが感じられる空間を作りたかった」と話す。
構想を練り始めたのは4年前。奈良町で本業の日本手拭い店を経営する傍ら、景観保護にも関心を持ち、20年近く空き家だった6軒長屋(約260平方メートル)を「後世に残したい」と購入。教義上、豚肉やアルコールを摂取できないムスリム(イスラム教徒)も旅先で不自由なく楽しめるようにと、ハラル対応の飲食店を開くことにした。
麺は兵庫県の製麺会社製造の、アルコール成分を含まない「ハラル麺」。料理長らと試行錯誤の末、鶏ガラスープをベースに鶏キーマや煮卵、ナッツを添えた、日本人の口にも合う後味さわやかなハラルラーメンを完成させた。
長屋にはさらに、ムスリムが1日5回行う礼拝の専用室や、礼拝前に手足を清める清浄場所も設置。今秋には、10人程度が宿泊できる「ゲストハウス」も開業予定で、長屋全体を「ならまちすーく」(スークはアラビア語で「市場」)として観光客らの交流場所としたい考えだ。
県観光プロモーション課によると、県内にあるハラルに対応した飲食店やホテルは5件程度だが、「礼拝室まで設けた飲食店は聞いたことがない」という。LCCの就航拡大やビザ発給要件の緩和により、東南アジアからの訪日観光客が近年増加する中、県内には昨年1年間で、イスラム教圏のマレーシアとインドネシア両国から約2万2千人(推定)が訪れ、前年より約8千人増えた。
今後もさらに増えそうなムスリム観光客。湯脇さんは「宗教の分け隔てなく、世界中の人が仲良く集える場所にしたい」と話す。
ラーメンは800円、1200円、1800円(いずれも税込み)の3種類。菓子とチャイ(茶)のメニューもある。開店は午前11時半~午後5時、年中無休。8人以上の予約があれば午後5時以降も営業する。問い合わせは、じんにいや(☎0742・93・8906)。ホームページはhttp://halalramen.jp/index.html
■ハラル 「合法」「許されたもの」を意味するアラビア語。野菜や魚のほか、イスラム教の作法にのっとって処理された鶏肉などを示す。豚肉やアルコールは「ハラム(禁忌)」として、摂取を禁じられている。国内外のハラル認証団体が、食品衛生や管理などさまざまな審査基準に合致した店舗に「ハラル認証」を付与している。
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