ネットいじめ顕著 人権侵害相談など4・1%増 奈良地方法務局まとめ
平成27年に奈良地方法務局が対応した人権侵害が疑われる相談や申告は304件に上り、前年比4・1%増加したことが分かった。うち、いじめについて学校側の対応に関する相談・申告は51件と最も多く、全体の16・7%を占めた。
同法務局によると、いじめについて学校側が適切な対応を取っていないと疑われる事案についての相談・申告は、前年より23件減少。小学校が40件、中学校が7件だった。
担当者は「大津市でいじめにより生徒が自殺した事件以降、社会的な関心が高まり、潜在化していた事案が顕在化している」と指摘。一方、「いじめ防止対策推進法の施行などにより、学校側も対応を図るようになってきた」としている。
次いで多かったのが、暴行や虐待事案の相談・申告で48件。ほとんどが家族間の暴行や虐待で、45件に上った。夫の妻に対する暴行・虐待は23件と最多で、親から子供へは16件だった。
プライバシー侵害事案に関する相談・申告は46件で、前年(20件)より大幅に増加した。特に、インターネットが絡む相談が41件と同16件から急増。「ネットの掲示板に名誉を毀損するような内容を書かれた。どうしたらいいのか」などといった相談が増えているという。
担当者は「ネットによるプライバシーの侵害事案は今後も増えていくだろう。すぐに削除できればよいが、海外に拠点のある会社を通さなければならないなど難しいケースもある」としている。
「SOSレター」で問題解決のケースも
つらいとき、手紙でも電話でもSOSを発して―。昨年、奈良地方法務局に寄せられた虐待事案をめぐっては、法務省が実施している小中学生に手紙でいじめや虐待の相談を受け付ける取り組み「人権SOSミニレター」が功を奏したケースもあった。
同法務局によると、中学生から「お父さんから殴られている」といった内容の手紙を受け取ったため、調査を開始。生徒が通う中学校や教育委員会、要保護児童対策地域協議会などと連携し、父親への指導や見守りを続けたところ、生徒への暴力が止んだという。
人権SOSミニレターは毎年10~11月、同省が県内の全小中学校に切手不要の専用の手紙の用紙を配布、相談を受け付ける。毎年200通程度の手紙が寄せられているという。返事は人権擁護委員が書き、子供の悩みに親身になって答えたり、関係機関へつなぎ、対応に乗り出したりする。
手紙のほか、同省では無料の電話相談「子どもの人権110番」(フリーダイヤル0120・007・110)も実施。担当者は「友達との付き合い方や家族の関係など、いろんな悩みを気軽に寄せてほしい。手紙でも電話でもつらいときはSOSを発信して」と呼び掛けている。
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(関西のニュースは産経WEST http://www.sankei.com/west/west.html)