鑑真の苦難渡航の絵巻がデジタル化 唐招提寺で映像公開
奈良時代に中国・唐から来日し唐招提寺(奈良市)を開いた鑑真和上の伝記を描いた全5巻、83メートルに及ぶ「東征伝絵巻」(重要文化財)が特殊なスキャナー(読み取り装置)を使ってデジタル化され20日、同寺と凸版印刷(本社、東京)が発表した。長大な絵巻を一度に鑑賞できるようになり、同寺は「命懸けだった鑑真さんの苦労を広く知ってもらう強い味方ができた」と期待。21日~11月3日、デジタル絵巻が同寺新宝蔵でスクリーンに投影される。
東征伝絵巻は、5度にわたる失敗を乗り越えて来日し、仏教の戒律を伝えた鑑真の活躍を伝える絵巻。鎌倉時代の僧、忍性が制作を願い出て、唐招提寺に奉納したとされる。
鑑真の苦労が描かれた絵巻を広く紹介しようとデジタル化。「東征伝絵巻 鑑真和上 辛苦の旅路と信念を描く」(上演時間約30分間)と題したコンテンツ(映像作品)を制作した。
通常の展示では難しかった絵巻の「全公開」が可能となったうえ、場面を選んで拡大することも可能。さまざまな場で投影し、タブレット端末で操作しながら紹介できる。唐招提寺の石田太一執事は「鑑真さんは仏教を学びたいという日本人に応えるため苦労され、失敗してもへこたれない強靱さを持っていた。それが描かれた絵巻を広く知ってもらいたい」と話し、今後はいろいろな所での公開も考えているという。
デジタル絵巻は今月24、25日と11月1、3日は僧侶による解説付き上演。いずれも午前11時からで、25日は午後2時にも予定。拝観料と別に、新宝蔵への入館には一般・大学生200円、小中学・高校生100円が必要。問い合わせは唐招提寺(☎0742・33・7900)。
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