【まちの近代化遺産・再録】生駒山上遊園地 京阪奈を見渡す昭和初期の「飛行塔」
大阪府と奈良県の府県境にそびえる生駒山(標高642メートル)の山頂付近にあり、家族連れでにぎわう生駒山上遊園地(生駒市菜畑町)。ここには、昭和4年の開業当時から稼働している大型遊具「飛行塔」がある。
飛行塔は、高さ約30メートルの鉄製で、4本の腕に人が乗る飛行機型の乗り物をつり下げ、高さ20メートルほどまで上がりながら旋回する。一番上まで上がれば、奈良盆地や大阪湾、比叡山、京都市街まで見渡すことができる眺望の良さも人気だ。
4本の腕を支える支柱部分にはエレベーターが取り付けられ、旋回しながら上昇するときは入れ違いでエレベーターが下降。エレベーターが上がるときには腕が下がる―という構造になっている。
遊園地で広報を担当する木村洋三さんは、「昭和30年ごろまで、飛行塔の頂上部分は展望台として開放していたので、エレベーターも使われていた」と明かす。ただし、「現在展望台は閉鎖しているため、エレベーターは動いているが、整備員以外は乗ることはできない」。
旋回しながら上昇、下降する大型遊具は今ではどこの遊園地でも見ることができるが、飛行塔は支柱部分に鉄骨が縦横無尽に張り巡らされ、時代を感じさせる重厚感がある。木村さんは「現代の技術であれば、これほど鉄骨を使わなくても十分強度を保てるはずだが、当時の技術力ではこれが精いっぱいだったのだろう」と推測する。
「浅草花やしき」(東京)や「ひらかたパーク」(大阪府枚方市)など、生駒山上遊園地よりも古い遊園地はあるが、戦時中に鉄の供出を求められ、大型遊具は軒並みなくなってしまった。飛行塔が残ったのは、その見晴らしの良さから海軍に接収され、関西の空を見張る防空監視所として使われたため、幸運にも解体されずに済んだという。
木村さんは、「85年もの長さにわたって稼働しているので、親子3世代にわたって乗りに来るお客さまも多い。従業員にとっても遊園地のシンボルになっている」と話す。
営業開始から85年。京阪奈を見渡す鉄の遊具は、きょうも乾いた金属音を響かせながら、関西の空を見守っている。(平成26年9月17日掲載)
※平成26年9月に奈良版でスタートした「まちの近代化遺産」を再録します。文中の年齢や肩書き等は掲載時のままです。
生駒山上遊園地の平成27年の営業は11月30日まで。営業時間は午前10時~午後4時。木曜休園。入園無料。詳しくは公式ホームページhttp://www.ikomasanjou.com/
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