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【私の働き方】「さらり」と「しなやかに」生きる 産婦人科医 島本郁子さん


 「自分の痛みとして診ることが大事では」。柔らかくこう語るのは、産婦人科医で「なら犯罪被害者支援センター」(奈良市)副理事長の島本郁子さん(80)。医師としての55年にわたる経験から、性犯罪被害者へのさまざまな支援の必要性を訴え、体制確立に尽力。精力的な活動ぶりは〝ワーカホリック〟と称され、多くの患者や医師が敬慕する。その生き方は〝しなやか〟そのものだった。

■自立できる仕事を

 祖父から3代続く医師の家系。小学校に入学するころ、父は軍医として召集された。あるとき、父が乗った輸送船に魚雷が命中。〝カナヅチ〟だった父は一晩中、自転車タイヤのチューブにつかまり、救助されたという。帰りを待つ祖母や母親の様子を間近で見ながら、「身につけた技術は残る。女性も自立できる仕事をしなければ」と産婦人科医を志した。

80歳の今も精力的に活動する島本郁子さん

80歳の今も精力的に活動する島本郁子さん

 昭和35年に県立医科大学を卒業。結婚し、長女を出産しながら同大大学院に進学、医学博士号を取得した。同大付属病院で勤務したが、当直勤務に加え、患者の出産や手術などで仕事は不規則。診察が終われば研究活動に勤しむ日々は、多忙を極めた。

 「男性と同じようにやらないと、評価されない」。「母親」という理由での〝配慮〟は望めなかった。長女は自宅近くの両親宅で夕食をとったり、当直室で一緒に寝て学校へ行くことも。娘の入学式や卒業式への出席はいつもかなわず、「今も胸が痛む」という。

■「世の中を変えたい」

 病院では、性被害に遭った女性や低出生体重児の恐れがある妊婦など、リスクの高い患者を診る機会が多かった。性犯罪は被害者の告訴が必要な「親告罪」のため、被害を届け出ないことを前提に受診する女性も。周囲に知られることを恐れて受診を嫌い、出産に至るケースもあった。

 「被害直後から支援しなければ」との思いを強くする一方、受け入れ先が見つからずに女性警察官と一晩中、県内の病院を回ったという性犯罪被害者もあり、支援態勢の不十分さを痛感した。「世の中を変えたい」。平成9年、女性警察官や女性産婦人科医を集めた勉強会を県警本部で開催し、証拠保全の重要性や被害者への配慮など、迅速かつ継続的な支援の必要性を強調。「患者さんが来たら、必ず診てください」と呼びかけた。

 こうした取り組みは、医師と県警が連携し、性犯罪被害者のケアをめぐる協力体制の構築につながった。女性警察官ら関係者を対象にした講義も行った。

■支援活動と仕事と

 13年には、民間の被害者支援団体「なら犯罪被害者こころの支援センター」(現・公益社団法人なら犯罪被害者支援センター)を設立。専属スタッフは雇えず、場所も天理大の心理学教室の一角を借り、1本の電話で相談を受ける態勢からスタートした。

 14年に18件だった相談件数は、15年には134件に急増し、組織体制の構築を急いだ。翌年には県農協会館(奈良市)内に専用事務所を設け、専属スタッフも配置。自身は事務局長に就任し、相談員の一人として診断やカウンセリング、警察への届け出を促すなどの支援活動にも取り組んだ。

 活動の傍ら、今年3月まで10年間、県立医大病院の「女性専門外来」を担当。80歳を機に退任したが、同じく産婦人科医となった長女が意志を引き継いでいる。

 「少し余裕ができた」という60歳のころに始めた趣味の短歌は、「気持ちの整理をし、自分を取り戻すため」。夜遅くまで続いた被害者支援の帰り道、こう詠んだ。

 「花冷えの満天の星仰ぎ見て明日もさらりと生きてゆけそう」

 長年の経験でたどり着いた〝さらり〟とした熱い生き方を、これからも続けるつもりだ。
(山﨑成葉)

 【プロフィル】島本郁子(しまもと・いくこ)さん 昭和10年生まれ。奈良県出身。奈良県立医大付属病院産婦人科での勤務を経て、米国テキサス州立大客員教授や県立医大教授などを歴任。平成9年から県警被害者支援アドバイザーを委嘱され、「なら犯罪被害者支援センター」の設立を主導、現在は副理事長を務める。被害者支援活動の功績で今年7月に警察協力章、10月に犯罪被害者支援特別栄誉章を受章した。

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(関西のニュースは産経WEST http://www.sankei.com/west/west.html)

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