【あのまちこんな店】茶畑広がるイタリアン「アトリエ・ラ・ズッカ」 完全予約制でゆったり
大和茶の茶畑が広がる奈良市東部・丹生町の山里に、イタリア料理店「アトリエ・ラ・ズッカ」がある。大阪から移り住んだ鼎(かなえ)高明さん(62)、文代さん(48)夫婦が経営。大和高原野菜など新鮮な地元食材を使った料理が自慢だ。町は「奈良市の隠れ家」をキャッチフレーズに地域おこしを進めており、その拠点にもなっている。
■高原野菜を使って
鼎さん夫婦は豊かな自然に魅せられて平成11年、大阪市から丹生町に移り住んだ。その2年後、大阪市内でイタリア料理店を開店、当初は丹生町から通っていたが3年前、その店は家族にまかせ、丹生町で新たに「アトリエ・ラ・ズッカ」(ズッカはイタリア語でカボチャの意味)をオープンさせた。
料理に使うジャガイモやニンジン、ネギ、レタスなどの野菜は地元の契約農家から仕入れ、すべてが無農薬栽培。ハーブやシイタケなども地元産だ。
「こちらに来た当初から、ときどき地元の人が野菜を届けてくれました。新鮮で、とてもおいしい。そんな大和高原野菜をみんなに食べてほしいと思っています」と文代さん。
完全予約制で、来店する人の希望を聞き、どんな料理でもてなすかを決める。「ゆっくりと料理を楽しんでほしい。このスタンスは変えられません」という。
■魚は熊野灘から
鼎さんの古里は熊野灘に面した三重県紀北町紀伊長島。三重県下有数の水揚げ高を誇る漁港があり、伊勢エビやブリなど、新鮮な魚介類が手に入る。鼎さんは紀伊長島にも店を構えており、料理に使う魚を仕入れに行ったり、直接送ってもらうようにしている。
冬の旬の料理のひとつが「ハタのアクアパッツァ」。白身魚のハタをオリーブオイルで炒めて、地元産のネギやトマトと一緒に煮込む。イタリア漁師が船の上でつくるシンプルな料理だが、魚と野菜から出たエキスが混じり合って絶妙な味を生み出す。
ほかにも大和高原野菜を使ったピッツァ、ピザ窯で焼いた大和肉鶏と大和高原野菜のグリル、トマトのマルゲリータなど、地元食材をふんだんに使った料理を、イタリアワインとともに堪能できる。
店は丹生町唯一のレストラン。奈良市中心部から車で約30分かかるが、県内はもとより、大阪や京都など他府県からも来店客が訪れるという。
■インバウンド誘致
丹生町では昨年4月、地域おこしを進める住民団体「Nyu farm(にゅうふぁーむ)」が結成された。鼎さん夫婦は、その中心的メンバー。過疎化が進む地域を盛り上げようと、茶摘みイベントやコンサート、講演会など多彩な催しを開催。今後は外国人観光客を受け入れるインバウンドの取り組みにも力を入れる方針だ。
すでに囲炉裏を囲んだ郷土料理体験、大和茶の産地らしい茶会体験、高原イチゴ食べ放題のイチゴ狩りなどのメニューを準備。正月には、香港からの旅行客が町内の農家民宿に宿泊した。農家民宿の宿泊者が希望すれば、鼎さんの店で食事をすることもできる。
文代さんは「奈良市の東部山間に、こんなにすばらしい場所があるということを多くの人に知ってもらいたい。リピーターになっていただく方を増やし、地域の発展につなげていきたい」と話している。(野崎貴宮)
アトリエ・ラ・ズッカ(奈良市丹生町)=同市中心部から車で約30分。夏場は営業しておらず、営業は10月~6月。完全予約制(1日5組前後)。ランチは正午~午後2時、ディナーは午後6時から。(☎0742・94・2015)。
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