【鹿角抄】中国人観光客多いのに、なぜ、英語版だけ? 奈良の鹿説明動画
鹿せんべいを手に、シカに迫られて困っている様子の外国人観光客を、奈良公園でよく見かける。シカがせんべいに食いつこうとする寸前で手を引っ込めたために、余計にシカに近寄られて大騒ぎする外国人の姿も。よく目にするぐらいだから、シカをめぐる外国人観光客のトラブルも増えているようだ。
シカのトラブルに関する相談を受け付けている「奈良公園のシカ相談室」によると、シカに噛まれたり、突かれたりする「人身事故」は平成26年度は74件発生。27年度は昨年12月末時点で86件発生と過去最高を記録し、うち49件が外国人からの相談だったという。
鹿せんべいをおねだりするときは「お辞儀」をし、人に慣れている奈良公園のシカたちが〝凶暴化〟したわけではない。相談が増えた理由の大半は、鹿せんべいをあげるときにじらすなど、「不適切な対応」によるものだそうだ。こうした傾向を受け、県ではシカとの触れ合い方を紹介する英語の動画を作成、昨年6月からネットでの公開を始めた。
75秒と短い動画だが、鹿せんべいの正しいあげ方のほか、発情期や出産後にはシカの気性が荒くなることなど、必要な基礎知識が盛り込まれている。動画を見た外国人も「とても分かりやすい」と高く評価していた。
外国人の相談者の過半数を占めるのは東アジアからの観光客というが、県によると英語以外の多言語で作る予定はないという。だが、観光バスを利用して団体で訪れるケースも多いアジアからの観光客にこそ、バスの車内や観光案内所などで動画を見てもらい、事故防止のための基礎知識を身に付けてもらうべきではないだろうか。
多言語のナレーションが難しければ、せめて字幕での多言語バージョン作成はどうだろうか。そんなちょっとした工夫こそ、奈良を訪れた外国人にいい思い出を作ってもらう一助になるのではないだろうか。(神田啓晴)
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