江戸時代の〝ハイテク工房〟発見、奈良市で刀装具製造跡
江戸時代初めに鍔(つば)や目貫(めぬき)などの刀装具を鋳造した鋳型と、金の代用品の真鍮(しんちゅう、黄銅)の製造などに使われた坩堝(るつぼ、耐熱容器)が奈良市柳町から大量に出土し、市埋蔵文化財調査センターが14日、発表した。坩堝で生成した真鍮を鋳型に流し込んで鍔などを作ったとみられ、付近に工房があったと推測される。国内の真鍮製造が定説よりも半世紀近くさかのぼる14世紀中頃に行われ、奈良が〝ハイテク技術〟を持っていたことを示す発見という。
発掘調査では、確認された炉跡近くの土坑群から、刀身と柄との境にはさむ鍔の鋳型(直径約9・5センチ、厚さ約2センチの完形品)や破片約800点が見つかった。素焼きの土製で、菊花系の文様が中心。見本を作る鋳型の出土例はあるが、実用品の鋳型が確認されるのは初めてという。また、柄の飾り金具である目貫などの破片約600点も出土。華麗な龍の文様のものが多く、刀の工芸品への移行をうかがわせる。
200点以上確認された坩堝は球形に近い直径10センチ程度のものが多く、銅と亜鉛を入れて熱を加え真鍮を製造する「三足付」や、真鍮を溶かし鋳型に流し込む「把手付」など3種類を確認。
出土したのは元興寺周辺に広がった「奈良町」の外れ。出土品よりやや後の記録「奈良曝」には鞘塗師や刀屋の名もみられるなど、付近には刀の関連産業があったこともうかがえる。
同センターの森下惠介所長は「真鍮の製造と鋳造を行った工房があったのだろう。華麗な刀装具を作っていたことも分かる」。金属分析を担当した西山要一奈良大学名誉教授は「17世紀中頃に奈良で真鍮が盛んに作られたいたことが分かった重要な成果」と話している。
出土品は16日~12月28日、同センター(奈良市大安寺西)で開かれる秋季特別展で公開される。
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