【鹿角抄】県外の友人への手土産は? 悩んだ末に到達したのは「アレ」でした
奈良に赴任してもうすぐ10カ月になるが、県外の友人に会いに行く際、意外に困るのが手土産だ。柿の葉寿司は少し仰々しい気がするし、奈良漬は好みが分かれる。実は、当たり障りのないデパートのクッキー詰め合わせを持っていったこともある。しかし、先日ついにその悩みを解決してくれる奈良らしい手土産を見つけた。牛乳を煮詰めて作る古代のチーズ「蘇(そ)」だ。
起源は定かではないが、国内では飛鳥時代後期に作られた記録がある。新鮮な牛乳を数十時間煮詰めて作るという手間や、1リットルからわずかな欠片しか作れないことから、当時は皇族や貴族しか食べられない高級品で、全国から都に貢ぎ物として贈られていたらしい。
土産物としては、昭和62年に西井牧場(橿原市)が飛鳥資料館の協力を得て再現し、「飛鳥の蘇」として販売を開始。食感は固く、なめらかさのないチーズのようだが、味わっていると素朴な牛乳のうまみが口の中に広がる。どこか懐かしい味は、コーヒーやお酒にも合う不思議なおいしさ。代表の西井利易さん(58)が「奈良らしい、おいしいお土産を目指した」というとおり、手土産にはもってこいだ。
だが、弱点もある。要冷蔵で賞味期限1週間という短さから土産物屋に置けないし、80グラムで税込み1080円と安くはない。売れ筋も観光客ではなく、「県外のリピーターからの注文が多い」(西井さん)という。
せっかく縁あって赴任したのだから、奈良の良さや魅力を知って、知らない人に自慢したい。「奈良土産には何がいい?」と尋ねられたら、自信をもって蘇をおすすめしたい。(桑島浩任)
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