【ふるコレ】心温める行灯と和ろうそく 安堵町のいいモノ
「お水取り」で知られる東大寺二月堂の修二会(3月1日~14日)で、堂内の闇に浮かび上がる灯明の火はやわらかく、揺らぎは神秘でさえある。この明かりのもととなる灯芯は、安堵町で灯芯ひきの技術(町文化財)を守る保存会から奉納されたものだ。
灯芯ひきはかつて同町で盛んだった伝統産業。同町へのふるさと納税の返礼品も、灯芯を使った行灯と和ろうそくで、古来の暮らしを伝える品となっている。
安堵は大和川と富雄川、岡崎川が合流する地にある小さな町。低湿地の土壌を生かして江戸時代中期頃から、米の裏作として灯芯用のイグサの栽培が始まった。灯芯の一大産地となったが次第に需要が減少し、イグサも栽培されなくなったという。
灯芯はイグサの外皮を除いたズイの部分で、油をしみ込ませて火をともす。今は約人から成る保存会が、町歴史民俗資料館で灯芯ひきの技術を継承。その作業は、水に浸したイグサを「ひき台」と呼ばれる道具の刃で外皮を引き裂き、ズイを取り出す。ズイは一束にまとめてつるし、乾燥。その様子はまるで麺のようにも見える。
「昔から伝わっている技術を絶やさないよう、手伝わせていただいている」と保存会の磯部雅也さん。言葉には、先人らの努力への尊敬の念が感じられる。
かつては家庭の日常品だった灯芯だが、今では使われるのは寺社などに限られている。知る人さえ少なくなりつつあるが、灯芯にともる明かりは多くの人の心を温めるにちがいない。
町は2万円以上の寄付に対し、行灯か和ろうそくのいずれかをプレゼント。富井文枝・総合政策課長は「ふるさと納税で灯芯を知ってもらい、灯芯でふるさと納税を知ってほしい」とPR。地味な品かもしれないが、地域の貴重な技術を知る機会にもなりそうだ。(岩口利一)
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