【鹿角抄】薬物使用、待っているのは地獄の苦しみ
元有名プロ野球選手の逮捕をきっかけに改めて薬物依存の恐ろしさがクローズアップされている。京都市では昨年、小6男児が大麻の吸引を告白するなど、薬物汚染の低年齢化も深刻化している。
これまで取材を通して、何人かの薬物依存経験者から話を聞いた。共通するのは最初は安易な気持ちで薬に手を出し、その後何もかも失う地獄のような苦しみを味わっていたことだ。
薬物依存に陥ってしまう人はさまざまな問題を抱え、その解決を薬物を使うことで晴らそうとする傾向にある。「いやなことがあったら覚醒剤を使っていた。薬なしではどうやって生きていいのか本当に分からなかった」。薬物依存者らの回復を支援する一般社団法人「GARDEN」(大和高田市)代表の伊藤宏基さん(41)は10年もの間、覚醒剤の使用を繰り返した経験をこう振り返った。
初めて覚醒剤を使ったときは多幸感に包まれたが、次第に薬がないとご飯を食べるのもめんどくさくなり、仕事にも行けない状態に。「薬を使うと捕まると分かっているが、我慢できずに使ってしまう。病気だということが分からなかった」と話す。人生がつまらなく、くだらない恐ろしいものに感じ、自殺を何度も図ったという。
そして依存から脱して支援する側に回った現在、こう話す。「僕はこの病気が本当に憎い。貴い命を奪ってしまうのがこの病の結末だ」
薬物依存者を治療する専門の病院や施設の数はまだまだ少なく、更生を支援する「受け皿」は不十分だ。「自業自得だ」と切り捨てるのは簡単だが、薬物依存者らが引き起こす犯罪は後を絶たず、再び罪を犯す割合も高い。本人だけでなく、家族など周囲の人間にも深い苦悶を与える。
治療や支援は社会全体として取り組まざるを得ない問題だ。同時に若者が安易に薬に手を出すことがないよう薬物防止教育の重要性も一層増している。薬物を使用することで待っているのは、地獄の苦しみだ。(有川真理)
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