地域のつながりで減災 情報共有、仕事分担して避難生活 熊本地震から学ぶ教訓
熊本地震の発生から約1週間後の4月22日に熊本県に入り、南阿蘇村や大津町、西原村などを約1週間取材した。道路などのインフラは復旧し始めていたが、長引く避難生活でのさまざまな問題が浮上してきた時期でもあり、各地での大規模災害への対応に生かすべき点も多かった。(神田啓晴)
過去の大規模災害でも問題になったが、熊本地震でも「空き巣被害」は多発した。熊本県警は24日までに計18件の被害届を受理。23日には福岡県の会社員の男(51)が窃盗などの容疑で逮捕された。
余震が頻発する中、避難所暮らしを続ける被災者の自宅を警戒するには、警察頼みでは限界がある。被災地では、地元消防団員などが連携して「自警団」を組織する地域があった。4月30日時点で約1300人が避難所で生活していた熊本県西原村もその1つだ。
情報共有に活用されていたのは、LINE(ライン)などのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)。避難所での炊き出しやボランティアのほか、不審者情報など、生活全般にかかわるさまざまな情報が瞬時に共有されていた。
村役場のホワイトボードには、不審者の発見日時や姿格好、車のナンバーなども掲示。村では消防団による「自警団」を組織し毎朝、各消防団の班長らが参加する会議を開催。日々、約250人の団員の半数以上が地域の見回りに参加していた。
地域住民のつながりが強かったことも、印象に残った。村内で取材したときは、消防団や住民から「こんにちは」「どちらから来られたのですか」など、よく声を掛けられた。村の災害対策本部によると「村の人同士はほとんどが顔見知りで、地域のつながりも強い。よそから来た人はすぐに分かる」といい、地域のつながりが不審者情報の伝達の速さにもつながっているようだった。
避難所の運営も、看護師の有資格者は救護班、小中学校の調理員は炊き出し-と、村民それぞれが「できること」を生かしたスムーズで無理のない運営だった。日頃から交流している村民同士だからこその対応だと感じた。
印象に残った言葉がある。災害対策本部で忙しく動き回っていた担当者の「『地元愛』が災害時には助け合いの精神につながる」という言葉だ。愛する地域のために住民自らが動くことこそが、減災や防災の大きな力になると感じた。
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