「御影堂の修理完了と布薩復活目指す」 唐招提寺第88世長老 西山明彦師
「御影堂の修理完了をめざすとともに、布薩(過ちを悔い改める仏教行事)を復活させたい」。今月1日の唐招提寺(奈良市)の第88世長老就任にあたり、西山明彦師(64)はそう抱負を語った。
御影堂には、奈良時代に中国・唐から苦難を乗り越えて来日し、同寺を開いた鑑真和上の坐像(国宝)を安置。瞑想する姿から生前がしのばれる和上は、僧が守るべき戒律を日本に伝え、同寺には「鑑真に戻ろう」という精神が今も息づいている。
「寺に残る古文書を掘り起こして布薩を行い、本来の僧侶、仏教徒としてのあり方、どのように生きるかを問い直したい」
幼稚園長なども務めてきた経験から、「『噓をついたら仏さんに怒られる』といったことを幼い頃から教え込まないと…」と話す。罪過を懺悔することで「当たり前の倫理・道徳を浸透させていきたい」という。
「過ちの〝告白〟は世界共通。東大寺二月堂の修二会(お水取り)なども懺悔の行で、奈良の仏教には鎌倉仏教以前の大陸的な宗教観が残っている」
高校卒業後、大阪府東大阪市の町工場に就職。伯父が住職を務めていた唐招提寺末寺の伝香寺(奈良市)から通勤するようになり、仏の世界に触れた。半年で退職して龍谷大学で仏教学を学び、高野山で加行(修行)して唐招提寺に入ったという異色の経歴を持つ。
子供の頃に親と訪れた際、「異国的な空気を感じた」という唐招提寺。寺についてはユーモアを交え気さくに語るが、「原点回帰」への思いは熱い。(岩口利一)
西山明彦(にしやまみょうげん) 三重県名張市生まれ。龍谷大学大学院修士課程修了。唐招提寺の執事や執事長などを経て、平成23年から今年3月末まで唐招提寺を総本山とする律宗の宗務長。4月1日からは管長も務めている。
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