【私の働き方】《番外編》育児と仕事両立 社会の環境づくりと意識改革必要
政府が女性の活躍推進を掲げる中、県内では結婚しない若い男女の増加などで平成26年の合計特殊出生率が1・27となり、北海道と並ぶワースト3位に。その背景には非正規雇用者の割合の高さや、働きながら子供を産み育てる女性への支援が不十分な点が大きい。働きたくても働けないママを減らすには、どうすればよいか。県で施策に携わる県子育て支援課の金剛真紀課長(53)に、自身の経験や思いを聞いた。(有川真理)
――県職員になったのは
子供のときから漠然と、「一生仕事を続けたい」と思っていた。高校生のときに先生から「一生働きたいなら公務員がよい」とアドバイスを受け昭和55年、18歳のときに入庁した。当時女性は男性の補助的な事務仕事が多く、管理職の育成もなかった。課の中に女性も1~2人。だけど、子供を持ちながら働いている人が多く、自分も定年まで働こうと思った。
――子育てとの両立は
25歳のときに職場結婚し26歳で長男、28歳で次男を出産した。夫は理解のある人で、家事や育児を全面的にサポートしてくれ、夫婦のうち早く帰宅したほうが料理を作っていた。
恵まれていたと思う。ほかにも、義母や職場の人にもサポートしてもらった。子供が小さいときは保育所に預けていたが、職場の人は「早く帰ったら」と気にかけてくれた。たくさん迷惑もかけたと思うが、支えてもらい、感謝している。
――そうした環境は、現実ではなかなか難しい
「公務員だからめぐまれていたんだ」と言われることも確かだが、だからこそ、理想は言い続けたい。県が子育て応援の筆頭に立ち、引っ張りたい。今は家事も育児も女性の負担が大きい。女性だけでなく、男性も育休が取りやすい社会になればよい。それには時間はかかるが意識改革が必要だ。女性だけでなく、男性のワークライフバランスも変えて、社会全体で子育て中の女性を支えるという意識が大切だ。
――仕事と子育ての両立は、女性の葛藤も大きい
仕事面で周囲に気がねしたり、後れを取ると焦ったりする気持ちはよく分かる。でも、子供と向き合う時期はかけがえのない大切な時間。余裕がなくイライラすることもあると思うが、私自身、「もっと子供の話を聞けばよかった」と反省することがたくさんある。大切に、その時間を味わってほしいと思う。
子育て中は、ある程度仕事のペースをゆるめることも必要。それは女性だけでなく、男性もできればいい。それぞれの夫婦でベストなバランスを取ることができる環境ができれば。
――支援のあり方は
いろいろな生き方があり、何を選択するかはそれぞれ自由だし、尊重したい。ただ、本当に選択したい道を男女ともに選択できるようにすることが大切だと思う。制度があってもそれを利用できる環境や人の意識がないと、気がねしてしまってうまくいかない。市町村とともに、まずは子育てと仕事が両立できる環境づくりをしっかりとやっていきたい。「保育士人材バンク」など子育てを支援する人材の確保にも力を入れたい。
――これからは
家事や育児を女性だけのものと捉えず、男性の積極的な育児参加を促したい。男性も時短勤務を選択するなど柔軟な働き方が実現できれば。社会全体でサポートする態勢を広げたい。
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