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【私の働き方】家族とともにコツコツと 植村牧場4代目 黒瀬礼子さん


 近鉄奈良駅の北約2キロ、般若寺の向いにある創業130年を超える老舗「植村牧場」。奈良市一円に新鮮な牛乳を届ける一方、障害者雇用にも積極的に取り組んできた4代目の黒瀬礼子さん(65)は、「身を粉にして、こつこつと働く。これが原点」とはつらつとした表情で語る。知的障害を持つ従業員と寝食も共にし、長い人で30年以上、人生そのものに寄り添ってきた。これからも「家族」とともに、〝老舗の牛乳〟を守っていく。【奈良発 私の働き方】黒瀬礼子さん

 ■知識「ゼロ」からのスタート

 明治16年ごろ、曽祖父が始めた植村牧場で生まれ育った。小さいころから、獣医だった祖父や父の仕事ぶりを見て「365日休みがなく、あまりやりたくない仕事の一つ」と思っていたという。

 中学生のころから手伝い始めたが、大学卒業後はゼネコンに就職した。4年半ほど勤めた26歳のとき、父親が脳卒中で倒れ、牧場を継ぐことを決意。牛に関する知識はゼロだったが、「やろうと思ったときが〝始まり〟」と北海道の町村農場で4カ月間研修を受けた。

 だが、研修は朝から晩までひたすら牛の体を洗う日々。霜焼けになった手にゴム手袋をつけて作業していると、10歳ほど年下の研修生らから「そんなことして仕事ができるのか」などといわれた。

 くわ一つ満足に使えないふがいなさを痛感しながらも、「負けてられるか」と奮闘。「人が生きていく上で、一番大事な一次産業。もっともっといろんな人に分かってもらうよう、日の当たるところに出ていかないと」。研修の中で、気持ちを新たにした。

 ■障害者の雇用を促進

 「人生の転機になることをたくさん学んだ」研修から奈良に戻って待っていたのは、〝小さな〟植村牧場だった。最新設備などを備えた牧場で学んだ直後で、気持ちばかりがはやった。労働力縮小を図ろうと祖父らに機械化を提案すると、「お前は何を見てきたのか」と一喝された。

 研修先の10分の1程度の規模にすぎない植村牧場では、経営を考えると機械化は極めて困難だった。「身を粉にしてコツコツ働け」―。原点は、このときの祖父の言葉にある。若いころは反発したが、今では「身に染みる」という。

 人手不足解消に、職業安定所に求人を出したが、〝3K〟の仕事には1年経っても応募がなかった。「一度、知的障害者を雇ってみないか」と担当者から提案され、「うちでよければ」と養護学校を卒業したばかりの歳の男性を雇った。

 だが、男性は一度で作業を覚えることは難しく、何度も挫折しそうに。だがそのたび、職業安定所の担当者や養護学校の教諭らが牧場を訪れ、「もう少しだけ辛抱してほしい」と頭を下げたという。

 熱意に応えようと、「繰り返し繰り返し、根気よく教えた」。半年ほどすると、男性は一つの作業をこなせるように。これを機に、今は従業員の過半数の14人が、重度の知的障害者。長い人は31年勤務している。「仕事もまじめで丁寧。人を気遣う優しさが牛乳配達でも表れて、地域の人たちに喜ばれるようになった」と話す。

 仕事は午前4時半ごろから始まるため、うち10人は住み込み。3度の食事を用意したり洗濯をしたり、生活全般の世話もしている。「仕事の戦力になってくれているし、もう〝家族〟です」とほおを緩めた。

 ■小さくても光る牧場を

 北海道研修から戻った26歳のとき、元勤務先の同僚で2歳上の一級建築士の夫と結婚し、長女と次女を出産。夫の理解も得て30歳を過ぎたころに4代目を継いだ当初は、「牧場を守らなければ」と重圧を感じていた。
創業当時から使っている牛舎には常時、30頭前後の牛をそろえ、1日300リットルほどを搾乳。奈良市一円の個人宅約700軒のほか、奈良ホテルや飲食店などに、絞りたての新鮮な牛乳を配達している。

 代表に就いた当時は牛乳だけだったが、ソフトクリームなどの新商品を開発し、敷地内でカフェレストラン「いちづ」も開業。仕事と子育てに追われたが、「同じ一日なら、はつらつとしていたい」と控えめに笑う。

 「財産は人。人との繋がりを大事にしながら、小さくてもどこか光るような牧場をずっとやっていきたい」。そう言って背筋を伸ばした。(山﨑成葉)

 黒瀬礼子(くろせ・れいこ)さん 奈良市出身。同志社女子大学芸学部英文科卒業後、ゼネコンに就職。30歳のころ、生まれ育った「植村牧場」4代目に就任した。新商品の開発や知的障害者雇用も進め、平成26年には農水省の「ディスカバー農山漁村の宝」を受賞。「いちづ」(午前8時~午後5時)は水曜定休。牛乳やソフトクリームは売店(午前10時~午後5時)で販売している。母親と夫、長女夫婦の5人暮らし。問い合わせは、植村牧場(☎0742・23・2125)。

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