【私の働き方】「食は楽しい」伝えたい 調理科学専門家・木村万紀子さん
大好きな「食」をライフワークにしようと平成25年、料理教室や食に関連したイベント、商品開発などを手がける「マニョリア インターナショナル」(奈良市)を立ち上げた木村万紀子さん(41)。幼い頃から料理好きで、大学卒業後は調理の専門学校に勤め、料理本の編集のほか、講師としても活躍。人生を豊かにする「食」の楽しみや奥深さを発信しようと独立し、ますます活動の幅を広げている。
■5歳で目玉焼きも
父親と一緒にテレビの料理番組を見るのが好きだった子供時代。自然と料理に興味を持ち、5歳のときには目玉焼きが焼けた。「黄身が割れないよう注意して、きれいに焼けるとうれしかった」と振り返る。
家族が喜ぶ顔をみると、ますますやる気が出てきた。小学2年のときにはテレビの料理番組を参考に、グラタンとレアチーズケーキを完成させるほど上達。中学、高校時代は勉強をしながら合間に料理本を見るのが楽しみだった。
高校1年のとき、図書館で1冊の本に出合う。調理の手法やコツを科学的に説明している本で、「天ぷらをからっとあげるにはどうしたらいいか」などが理論的に書かれていた。漠然と料理に携わりたいと考えていたが、この本を読んだことで「調理師とはまた違うフィールドで料理を極めたい」と真剣に思うように。5年、札幌から奈良女子大学家政学部食物学科に入学、より深く食について学ぶ日々を送った。
■仕事と勉強と結婚と
大学卒業後は調理師専門学校で8年間勤務。料理本を製作する部署での仕事の傍ら、教壇にも立ち、調理科学や食品学を教えた。平行してその学校の夜間課程に通い、調理師の勉強も。そして、29歳で結婚。充実した日々だったが、次第に家庭との両立が難しくなり退職。その後は非常勤講師として学校で教えながら、料理教室を開くようになった。
転機が訪れたのは、18年に長男(9)を出産してから。ちょうど国が「食育」に力を入れ始めたころで、「子供たちに食の大切さを教えることができないか」と「調理科学」を教える子供向けの料理教室を立ち上げた。
「蒸しパンはなんでふくらむの?」など、子供が興味を持ちやすいテーマを題材に開く教室は人気を集めた。子供たちが目を輝かせながら料理に取り組む姿はかつての自分とも重なり、充実していた。
■この道一筋の決意
「料理を通じて人に喜んでもらえる体験をすることで、子供に達成感や自信、食のすばらしさについて感じてほしい」。教室では、紙おむつをした未就学の子供もコンブとカツオでだしを取り、炊き込みご飯をつくるといい、「お母さん方もびっくりしています」と笑う。
現在は料理教室のほか、講演会やイベントにも参加。高校でも教鞭を取る。子供と一緒に午後10時に就寝後、午前3時に起床して料理本の執筆をすることも。子供と一緒にいる時間を大切にしながら、こまめな隙間時間に仕事をするスタイルを続けている。子供の成長に合わせ、ゆくゆくは事業を拡大するつもりだ。
「家庭も仕事も大切にするのが自分の生き方。夫も私の仕事を認めて応援してくれるようになった。これからも『食』の大切さを伝えていきたい」。この道一筋の決意と、覚悟を決めている。(有川真理)
【プロフィル】木村万紀子(きむら・まきこ)さん。昭和50年、札幌市生まれ。夫(43)と長男(9)、長女(5)の4人家族。料理をおいしくするコツを科学的な理論で分かりやすく伝える「調理科学」の専門家として、大人や子供向けの料理教室やイベント、セミナーなどを開催。「食」をキーワードにさまざまな事業展開をしようと「マニョリア インターナショナル」(奈良市)を立ち上げ、活動の幅を広げている。ホームページは(http://manyoria.com/)。
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