【私の働き方】「生きる力」取り戻した、主婦からエステオーナー 田畑優美子さん
エステが「生きる力」を取り戻すきっかけだった-。エステサロン「オリーブ」(生駒市)のオーナー、田畑優美子さん(49)は最愛の夫を事故で亡くし、悲しみのどん底にいたとき、エステで人の手から伝わるぬくもりや優しさに癒やされ、立ち上がる気力が湧いた。自身の体験から1人でも多くの人の心身を癒やしたいとエステの道へ。スクールやセミナー講師としても多忙な毎日だが、「お客さまの心と体を元気にしてあげたい」と生き生きとした表情で語る。
◇夫が突然の事故
高校の同級生だった夫とは、26歳のときに結婚した。派遣社員として勤務し、夕方には帰宅して夫の帰りを待ちながら夕飯を作る。そんな毎日が「最高に幸せで、夢に見た穏やかな生活だった」という。
だが、あの日。いつも通り「これから帰るよ」と夫から電話があった後、しばらくして警察から連絡が。「ご主人さまが事故にあわれました」と聞いた瞬間、目の前が真っ白になった。
「これまで多少のことは乗り越えてきたけど、そのとき初めて壊れた」。わずか10年間の結婚生活だった。仕事に行けず、ご飯も食べられない。「なんでこんなことに」。つらくて家に引きこもる日々が続き、1カ月で9キロも体重が減った。
そんなとき、友人が知り合いのエステのコースをプレゼントしてくれた。エステといえば高額な商品を売りつけられる、無理やり契約させられる…といったイメージしかなかったが、引きこもっていた自分を励まそうとしてくれた気持ちがありがたく、「行ってみよう」と決心した。
◇手から伝わる優しさ
友人が紹介してくれたのは、大阪府東大阪市の下町にあるエステ。女性が自宅の一室をスーペースにして開業したこぢんまりとした店で、入り口には子供の靴やランドセル・・・。客が横たわるベッドのそばでは子供がゲームで遊んでおり、これまでのエステのイメージを完全に覆された。
だが、そこで受けたエステが自分の人生を変えた。2~3千円の顔のコースで、クレンジングして洗顔、マッサージ、パックというシンプルなものだったが、言葉以上に手から伝わる優しさ、励ましに感動した。「『元気だしてね』という気持ちが心と体に染み渡ってきた」。終わった後、自分の顔を鏡でみるとすっきりして、すっかり変わっていたという。
「人の心をこんなに癒やせるエステってすごい」。その女性の誘いもあり、エステの道に進もうと決意。バイトをしながら、夜はエステの勉強や練習に当てる日々が続いた。
◇エステ文化を広めたい
そして平成14年、37歳のときに自宅の一室をサロンにしてエステ店を開業した。始めは「細々とやろうと思っていた」ので週2回の開業だったが、次第にリピーターが増えていった。
19年には「スパの聖地」といわれるインドネシアのバリへ行き、技術を習得。3年前からは自宅全部をエステ店に改装、今年7月からは自宅近くのビルに移転し、リニューアルオープンした。地元の人を中心にファンも多く母娘、友人同士、夫婦で訪れる客もいる。
手から伝わる優しさに感動し、人生に前向きになる勇気をくれたエステ。「ヨーロッパでは美容室と同じ感覚でエステに行く。日本にもエステ文化を広ませられれば」。1人でも多くエステのすばらしさを知ってほしいと夢を語る。
(有川真理)
【プロフィル】 田畑優美子(たばた・ゆみこ)さん 昭和40年生まれ。大阪府出身。生駒市鹿ノ台南2の3の2鹿ノ台中央ビル104でエステサロン「オリーブ」を営む。今年、エステの全国大会「エステティック・グランプリ」の「フェイシャル技術部門」でグランプリに輝くなど技術面でも高い評価を受けている。メニューは「フェイシャル」や「ボディ」のほか、額にオイルを流し、脳を瞑想状態へ導くといわれる「シロダーラ」など。営業は午前10時~午後9時。定休日は祝日、第1、3、5の日曜。詳しくはオリーブ(電0743・78・3374)。
【関連記事】
【私の働き方】社会の弱者に寄り添う 奈良弁護士会長 佐々木育子さん
【私の働き方】営業から転身、菓子づくりの道へ 「たけひめ」代表 緒方亜希野さん
【私の働き方】「さらり」と「しなやかに」生きる 産婦人科医 島本郁子さん
【私の働き方】「好き」を仕事に ファッションスタイリスト 岩澤奈穂さん
【私の働き方】《番外編》育児と仕事両立 社会の環境づくりと意識改革必要
(関西のニュースは産経WEST http://www.sankei.com/west/west.html)