林業はスイスに学べ 県が欧州型の管理ノウハウで森林再生へ
県内の林業を取り巻く環境が年々厳しさを増している。巨額の累積債務を抱え存続困難となった県林業基金に代表されるように、外国の安い輸入木材に押され、林業の経営環境は悪化。森林所有者の経営意欲の低下で放置された人工林も多く、喫緊の課題となっている。
県森林整備課によると、こうした課題は全国的にも同様の傾向。林野庁は、自然環境の保全と林業経営を両立させる「持続可能な欧州型」の森林管理ノウハウを取り入れようと、事業を進めているという。
こうした中、県では国有林が少ないなど、森林の特徴や地形が似ているスイスの管理方法に注目。技術や人材育成などを県にも応用しようと計画し、昨年6月にはスイスから専門家を招聘。高取町や王寺町で現地研修会を実施した。
同課によると、スイスではかつて、県と同様に1種類の樹木を植える単層林の林業が盛んだった。だが、1990年代に2度の暴風災害により、単層林で多くの倒木が発生。木材価格の急落を招く大打撃を受けた。
これを受け、「災害に強い森林づくり」を第1とし、より自然に近い状態の森林づくりを目指すことに。科学データを利用した管理方法や人材育成にも力を入れ、質を重視したマネジメントを取り入れてきたという。
担当者は「県と共通点の多いスイスの林業を学ぶことで、県でも持続可能な森林管理の仕組みづくりにつながれば。まずは、スイスの森林管理に対する考え方を知ってもらいたい」と話す。
県は2月に森林管理をテーマにした講演会のほか、曽爾村と川上村で自治体職員や森林経営者、林業団体など林業、木材産業に携わる人を対象に、スイスの専門家と意見交換を図る交流会も実施する予定。
2月16日に桜井で林業考えるシンポジウム
環境に配慮しながら持続可能な森林管理を行っているスイスの林業の仕組みを学ぼうと県は2月16日、桜井市の「あるぼ~るイベントホール」でスイスから招いた専門家らによる講演やパネルディスカッションを開催する。
当日は、スイスで森林管理の政策立案やコンサルティング業務を行ってきたヴァルター・マルティ氏のほか、山林の管理や運営などを行う「総合農林」(東京)社長の佐藤浩行氏、スイス近自然学研究所代表の山脇正俊氏が登壇。森林管理をテーマとした講演や質疑応答などを行う。
ヴァルター氏はスイスで森林管理のコーディネーターを指す国家資格の「フォレスター」として32年間スイス林業に行政面から携わってきた。担当者は「スイスの森林管理方法や考え方を知り、今後県に応用できれば。まずはその一歩としたい」としている。
定員100人で、参加無料。申し込みは2月10日まで。問い合わせは県森林整備課(☎0742・27・7612)。
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