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【鹿角抄(コラム)】 心惹かれる奈良文化 出不精だけど…もっとどっぷりつかりたい

昨年は就職に人生初の一人暮らしに、と変化に富んだ1年だった。仕事で運転することも多く、奈良という土地にも慣れてきたように感じる。
そこでふと、プライベートで「奈良らしいこと」を体験しているだろうかと思い返してみた。「正倉院展の鑑賞」や「東大寺、春日大社への参拝」…。あれ、思っていたよりも奈良を堪能していないと気がつく。赴任当初は寺社巡りや御朱印集めができると意気込んでいたのだが、いかんせん出不精がたたった。何とももったいない8カ月間を過ごしたものだと後悔している。
年末、紙面の企画で茶道の体験をした。もともと興味はあったが、茶道に触れるきっかけもなく、全くの初体験。教室ではまず、正座に苦戦した。実家に畳はあるが、正座をする機会はなく、たったの15分ほどで足がしびれてしまった。しかし、正座をするだけで、姿勢を正し、背筋を伸ばそうという気持ちになった。
ひとつひとつの作法を教えていただきながらお菓子を食べ、お茶をいただく。茶碗を動かす動作ひとつをとっても細かく決まっていることに驚いた。記者はたどたどしい動きしかできなかったが、教室に通う生徒の方々は非常になめらかで指の先まで美しく、つい見ほれてしまう所作だった。
体験では薄茶だけでなく、濃い茶もいただいた。濃い茶は溶かしたチョコレートのようにとろみがあり、「飲み物」ではない初めての感覚だった。茶道では、濃い茶は「飲む」ではなく「喫する」という言葉を使うのだという。指導してもらった堂後宗邑教授(49)は、「口に入れて味わうことを意味し、喫茶の語源は茶道にある。茶を味わう文化は昔から奈良に根付いていた」という。茶道発祥の地での体験は、想像以上に心ひかれるものだった。
スキルが身につくだけでなく、その所作や長く続く文化が心を穏やかにしてくれる茶道。奈良にいる間に奈良らしい文化を習い初めてみるのもいいかもしれない、と今前向きに検討中だ。     (石橋明日佳)

【カフェ】 寂れた神社 女性宮司が再興 境内で憩える  御所・葛木御歳神社

東川優子宮司

東川優子宮司

奈良県御所市の葛木御歳(みとし)神社の境内にあるイタリアンカフェ「みとしの森」が市民や全国の神社好きの交流の場となっている。運営と料理を1人でこなすのは、同神社の女性宮司だ。ひょんな縁から継ぐことになったのは、人の手が入らずにすっかり寂れてしまった神社。再興から神社カフェの開店まで、たった1人で始めたチャレンジは多くの人を巻き込み、進化を続ける。

■ぼろぼろの神社
壊れたままの拝殿の階段、板が外れて中が丸見えの摂社、屋根が落ちた社務所。同神社の宮司、東川(うのかわ)優子さん(54)は初めて神社を訪れたとき、その寂れた様子に驚いたという。
同神社は「神代の創祀」とされ、稲の神様「御歳神」をまつる全国の神社の総本社という格式高い神社。だが、当時の宮司は公務員の仕事が主で、跡を継ぐ人もなく、手入れが行き届かない状態が長く続いていた。
東川さんはそれまで、塾経営や家庭教師の仕事に奔走していた。だが、不景気のあおりで順調だった事業が行き詰まった平成16年春、心身ともに追い詰められた東川さんの足はなぜか、それまでまったく心に留めたこともなかった神社へと向かった。
寂れた雰囲気の漂う参道を抜け、導かれるように境内の奥に入ったときのことはよく覚えている。「神様に『よくきたな』といわれているような、ウェルカムな感じがした。一筋の光に思えました」
■ボランティアの輪
「神社を継ごう」。不思議な縁が結ばれた気がして、その場で決意した。幸い宮司の理解があり、許可を得て神道を猛勉強した。「おもしろくておもしろくて、急激にはまった」といい、同年夏には神職の資格を取得した。そして、すぐに神社の改修に取りかかった。
「水が流れれば血液がめぐるように神社が変わるのでは」と思い、まずは手水舎の新設を計画。だが、人手も資金もない。思いついたのがインターネットの活用だった。
神社のホームページを開設、神社が好きな人が集まる掲示板に「手水がなくて困っている」と書き込んだ。すぐに神戸の男性から返信があり、5~6人の仲間と駆けつけてくれたという。ボランティアの輪はこれを機に広がり、支援の申し出や寄付が全国から舞い込んだ。
21年に前宮司の引退で宮司に就任。「きれいになるのを神様が待ったはる」とボランティアと作業に打ち込み、拝殿の階段や摂社の修復からぼろぼろだった瑞垣や御簾の新調まで、神社の再興に情熱を傾けた。
25年にすべての工事が終了した。「まさに平成の大改修。神様に本当にいろんな人とのご縁を結んでもらった」と振り返る。
■神社カフェで交流
26年末、次の目標としてひらめいたのが「神社カフェ」だった。境内には倉庫に使っている広い部屋がある。周辺には飲食店がなく、地域住民や遠方からの参拝者が集う場になることが予想できた。
思い立ったが吉日、と27年1月からネットのクラウドファンディングで開店資金を募り、同6月「サロン&カフェ みとしの森」をオープンした。カフェでは地元食材にこだわったイタリアンのランチやケーキを提供。運営から料理まで、すべて東川さんがこなす。音楽会や神道講座などのイベントも開催しており、東京や大阪など県外からの参拝者や、「おもしろい女性宮司がいる」と聞きつけてやってくる東川さんのファンも多いという。
東川さんは走り続ける。「これからはイベントやツアーを通して『神社ってこんな場所だよ』というのを知ってもらい、盛り上げる活動を広げていきたい」。

境内にある「サロン&カフェ みとしの森」

境内にある「サロン&カフェ みとしの森」

 「サロン&カフェ みとしの森」は午前時~午後4時。月・火・水曜定休。詳細はみとしの森ホームページ(http://mitoshinomori.com/)。予約、問い合わせは☎(0745・66・1708)。

【事件】 コンビニ強盗の映像公開 アディダスの赤ジャージ男

防犯カメラに映った犯人の男

防犯カメラに映った犯人の男

奈良市六条西のコンビニエンスストア「ファミリーマート奈良六条西店」で今月5日に発生した強盗未遂事件で県警は12日、店内の防犯カメラに映っていた犯人の男の画像を公開した。赤色ジャージー上着に黒いニット帽と白いマスクを着用し、金づちを持っている。情報提供は奈良署(☎0742・20・0110)。

【ならの伝統】 柄の原料、カシ不足深刻  古武道「宝蔵院流槍術」のピンチ救え

宝蔵院流槍術の演武を披露する一箭順三さん(左)

宝蔵院流槍術の演武を披露する一箭順三さん(左)

奈良発祥の古武道「宝蔵院流槍術(そうじゅつ)」。約460年の歴史を持つ由緒正しき武道だが、槍の柄の原料であるカシの不足が深刻化し、伝統の継承に黄色信号がともっている。槍に適する長尺で無節のカシを調達できるのはいまや愛知県の製材所1軒のみ。「自分たちで植林するしかない」。伝統を守るべく、槍術の伝習者が立ち上がった。
■460年の伝統
昨年12月10日、奈良県上牧町の山林ではカシの苗の植樹祭が行われていた。平成25年から毎年、ドングリから大切に育ててきた「ハナガカシ」の苗だ。約2500平方㍍の敷地に随時、計1500~2千本を植える予定で、30~50年後に伐採し、槍の柄を製材するという長期計画を立てている。
宝蔵院流槍術は約460年前に興福寺(奈良市)の僧、胤栄(いんえい)が始めたとされる奈良発祥の古武道。現在は奈良を中心に国内外で約100人が鍛錬に励む。特徴は、十文字の穂先が付いた「鎌槍」(長さ2・7㍍)。穂先まで真っすぐ伸びた素槍(同3・6㍍)と対戦する形式で、稽古や演武を行っている。
これまで柄にはシラカシを使用。武道具屋に発注すればなんなく手に入っていたというが、宝蔵院流槍術21世宗家の一箭(いちや)順三さん(68)=奈良市=は「カシが年々不足し、10年くらい前から槍を調達するのが難しくなった」と打ち明ける。
■一流の槍材再興へ
一箭さんによると、柄に適するのは繊維が真っすぐで、節のない長尺のカシ。カシが建材として利用されていた時代は日本全国にカシ林があったが、建材需要が減った影響で年々減少。今では愛知県の製材所1軒だけが槍の受注を請けてくれている状況だ。
カシ以外の木も加工してみた。だが堅すぎてしならずに割れたり、握ったときの滑りが悪かったりと、うまくいかなかったという。
「こんな槍で練習していたら、技術まで変わってしまう」。危機感を抱いた一箭さんたち伝習者は自らカシ林を育てることを決意。せっかくなら江戸時代に槍の一流ブランドとして名をはせた「ハナガカシ」を再興しようと決め、ドングリから育てるべく、平成25年11月、ハナガカシの自生する九州へと向かった。
■50年の壮大な計画
ハナガカシは真っすぐに伸びる性質があり、堅さと弾力性に優れるなど、槍の原料としては最適。だが、木の育成に関して一箭さんたちは素人。そこで県森林技術センターに相談し、アドバイスを受けながら毎年ドングリを植え続け、大切に育ててきた。
そして昨年、ようやく植樹できるまでに苗が成長。シカの食害に遭わない山林を上牧町に見つけ、植樹祭に先立つ同12月1日、同センターとの間で正式に、ハナガカシ育成に関する協定を結んだ。今後50年にわたり、同センターが育成の助言、補助をするというものだ。
同センターの伊藤貴文所長は「奈良にハナガカシは自生しておらず、私たちも育てた経験がない。試行錯誤しながら見守るしかない」としながらも、「歴史ある古武道を将来にわたって支えようという壮大なプロジェクト。関わることができてうれしく誇りに思う」と期待を込めた。

竹筒で育てたハナガカシの苗(一箭さん提供)

竹筒で育てたハナガカシの苗(一箭さん提供)

 奈良宝蔵院流槍術保存会では山林取得などにかかる費用約200万円を目標に募金を呼びかけている。個人は1口5千円、企業法人は1口1万円。申し込み、問い合わせは同保存会(☎0742・44・9124)。

【撮影日記 奈良写真倶楽部】雲海染める朝の光 鳥見山公園展望台から

%e3%80%8c%e6%9c%9d%e3%81%ae%e5%85%89%e3%80%8d 朝の午前8時前、鳥見山公園(宇陀市榛原)の展望台から雲海を狙って撮影した。白い霧に朝日が映ってほの赤くなっているのが美しい。本当は柿本人麻呂(かきのもとひとまろ)が「東(ひむがし)の 野にかぎろひの 立つ見えて かへり見すれば 月かたぶきぬ」と詠んだ厳寒の日の早朝に東の空にできる朝焼け「かぎろい」を見たかったのだが、もっと気温が下がらないと無理なようだ。  (福岡延雄)

【平成28年12月例会優秀作品】「焼岳」藤森弘(香芝市)▽「朝の光」福岡延雄(桜井市)▽「空中戦」森好央(天理市)▽「瓦アート」出口博司(広陵町)▽「大空を翔る」橋本剛(奈良市)

【あっ、これ食べたい!】 糖度高~い イ・チ・ゴ~   めいとく農園

奈良市山町にある「めいとく農園」のイチゴは第43回農林産物品評会で農林水産大臣賞を受賞するなど、数々の受賞歴をもつ。イチゴといえば春のイメージがあるが、「気温の低い時期の方が、赤く色付くまで日数がかかるので甘みがあります」と代表の山田明徳さん(36)は話す。
めいとく農園では、奈良の育成品種で酸度と糖度の高い「古都華(ことか)」と、大きい果実の「かおり野」、果皮のやわらかい「章姫」を育てている。「やっぱり大きいイチゴが食べ応えもあっておいしいですよ」という山田さんは、他の作物は作らず〝イチゴ一筋〟だ。
採れたての大きな「古都華」を一粒かじってみると、実は硬めでしっかり。果汁が口の中にあふれ出す。
同園は直接販売はしておらず、農産物直売所の「旬の駅ならやま」などで購入できる。中でも「古都華」はファンが多く、入荷後すぐ売り切れることも。納品時間などは収穫状況によって異なるため、各販売所への問い合わせをお薦めします。  (朋)

【販売場所】旬の駅ならやま(奈良市奈良阪町2626-2 ☎0742・22・2930 営業時間午前9時~午後6時)
奈良のうまいものプラザ(奈良市三条本町1-1JR奈良駅構内1階 ☎0742・26・0088 営業時間午前7時~午後9時)
JA特産品アンテナショップ(奈良市今辻子町45-1 ☎0742・24・4657 営業時間午前10時~午後6時で、イチゴは月曜・水曜・金曜のみ)
【メニュー】古都華(1パック700円~)、かおり野(1パック450円~)、章姫(1パック450円~)%e3%81%82%e3%81%a3%e3%80%81%e3%81%93%e3%82%8c%e9%a3%9f%e3%81%b9%e3%81%9f%e3%81%84%ef%bc%81%ef%bc%92%e3%82%81%e3%81%84%e3%81%a8%e3%81%8f%e8%be%b2%e5%9c%92%e3%81%ae%e3%81%8b%e3%81%8a%e3%82%8a%e9%87%8e

【なら正月記 五】 雌雄一体 天焦がす炎  五穀豊穣願い千数百年

炎を上げて燃え上がる茅原のトンド(平成24年、御所市教委提供)

炎を上げて燃え上がる茅原のトンド(平成24年、御所市教委提供)

境内の闇に沈む高さ6㍍を超える雌雄一対のトンド(大松明)。灯明の火を受けた火付け役が雄、雌の順に点火すると、各先端のカヤ飾りがパチパチと音をたて、一気に燃え上がる。
役行者の生誕地と伝わる奈良県御所市茅原(ちはら)の吉祥草寺で毎年、1月14日夜に行われる「茅原のトンド」(左義長)。トンドを囲む修験者が唱える般若心経と、境内を埋める住民らの歓声に勢いづけられるように火は燃え盛り、最高潮に達する。
トンドとも呼ばれる「左義長」は全国各地で小正月に行われ、書き初めや正月飾りが焼かれる火祭り行事。茅原のトンドは最大級といわれ、すさまじい迫力だ。千数百年の歴史があり、修験道の開祖として崇められる役行者の生誕地にふさわしい火祭りといえる。
□  □
左義長とは本来、どんな行事なのだろう。
「国史大辞典」などによると、遊びに使われた毬杖という杖を焼いたのが起源らしく、中世以降盛んになった。宮中では書などが焼かれ、左義長、トンドは次第に民間にも広まったという。
「民間のトンドは正月に迎えた歳神様を送り返す行事だが、茅原のトンドは違った意味もあるようです」
御所市教委文化財課技師の金澤雄太さん(30)はこう説明する。
茅原のトンドは全国の左義長の中でも特異な存在で、飛鳥時代に役行者が天下太平や五穀豊穣を願って始めたといわれる。文武天皇が病気になった際、吉祥草寺で祈願すると治ったため法要を営んだのが起源とする伝説も。修験道の「採燈護摩」や仏教の正月行事「修正会」が影響し、豪壮な火祭り行事になったと考えられるという。
トンドが雌雄一対になっているのも全国的に珍しく、金澤さんは「雌雄のトンドが燃える速さを競い、1年の豊凶を占う年占いの要素もある。一般的な神送りの祭りではない複雑な様相が見られる」と指摘する。
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茅原のトンドを見に行くと、トンドが朝顔の花のように上に向かって広がる形をしているのも目を引く。
行事を現在担うのは、地元の茅原、玉手両地区。雄のトンドは玉手区民が、雌は茅原区民が作る。本体を包み込む竹の扇や芯になる柴、ワラやカヤの飾り、本体に巻き付ける鉢巻(しめ縄)を作るため、古来の技術が必要だ。
茅原区長で吉祥草寺左義長大トンド保存会長でもある北谷敦美さん(75)は「トンドをやるには資材集めから始まり、1年がかり。年がら年中、準備している」という。
トンドをたてるための松杭やワラ、カヤ、竹などの調達から始めなければならない。年明け早々の3日には両区の総会で奉納することを確認。6日に両地区の役員が節会の打ち合わせをし、翌日から茅原区の女性たちが浄財集めを行う。
「自分たちの代で途絶えさせることはできない。きちんと後世に伝えないといけない」と北谷さん。
そんな人たちが守ってきた茅原のトンドは、今年で1316回目を数えるという。   (山本岳夫)

 茅原のトンド 国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択され、県指定無形民俗文化財に指定されている。1月14日午後7時50分ごろ、新賀橋があった場所で地区役員が「手打ち」をした後、行列を組んで吉祥草寺へ。同8時ごろ、寺入り口で再び手打ちをして境内に入り、本堂前で3回目の手打ち式を行った後、本堂に入堂。御符の授与を受け、同8時半ごろに灯明から受けた火で点火する。

「なら正月記」おわり

【なら正月記 四】 もてなしの心 源流で知る わび茶の祖、珠光の境地

%e3%80%90%e3%81%aa%e3%82%89%e6%ad%a3%e6%9c%88%e8%a8%98%e3%80%91%e2%91%a3%e8%8c%b6%e9%81%93%e3%80%80%e3%83%a1%e3%83%bc%e3%83%b3 茶道といえば、日本文化の代表格。美しい所作にあこがれる一方、縁遠いとも感じてきたが、初釜の時期を控え、奈良町(奈良市)にある「表千家堂後茶道教室」で体験してみた。
「まずは一服どうぞ」。正座をすると、指導役の堂後宗邑・表千家教授(49)にすすめられ、「客」として薄茶をいただくことに。干菓子を食べている間に「亭主」役の生徒が点ててくれる。堂後教授が「茶道はおもてなしと謙譲の心」と話す通り、亭主は茶器一式をふくさで清め、冬は冷えるため茶筅や茶碗を湯で温める。
薄茶を出されると、左隣の人に「お先にちょうだいいたします」、亭主には「お点前をちょうだいいたします」と断ったうえで茶碗を上げ、神仏に感謝の意を示す。茶碗を左手にのせ、右手を軽く添え、時計回りに2度回す。
口の中に苦みが広がるが、ほのかな甘みも。飲み終わると、右手親指と人さし指で軽く飲み口を拭き、手は懐紙でぬぐう。茶碗を今度は反対に回し、正面を亭主側に戻して置いた。
釜で湯が沸く音、茶の香り、茶碗の感触…。ぎこちない自分の作法だが、茶の文化を五感で体験できた。
□  □
実は奈良と茶は縁が深い。
鎌倉時代に西大寺(奈良市)を中興した僧、叡尊が鎮守、八幡神社に供えた茶の残りを振る舞ったという伝承にちなんだ「大茶盛式」を知る人も多いだろう。当時、西大寺や興福寺などは茶園を持ち、室町時代になると寺院では茶を飲み産地を当てる「闘茶」も行われたという。
さらに、「わび茶」の祖とされる室町時代の茶人、珠光は奈良出身だ。茶道は「茶」と「禅」の関係が深まったことにより、「わび」といった文化に広がったとされる。珠光は有名な千利休が活躍する前に「茶禅一味」の境地に至ったとされ、その背景には喫茶文化の先進地だった奈良があったと考えられている。
こうした珠光にちなみ、毎年2月(今年は7~12日)には社寺で「珠光茶会」が催されている。茶の文化の源流が奈良にあることを発信する目的で、仲川げん・奈良市長は「珠光茶会は4回目を迎え、認知されつつある恒例行事となった。観光を盛り上げるイベントとなれば」と期待する。
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表千家堂後茶道教室は、稽古を堅苦しいものではなく、茶の湯を楽しむための立ち居振る舞いを知ってもらう機会としている。そんな稽古に通う生徒は学生からリタイアした人までと、実にさまざまだ。
「ハードルが高いと思っていたが、振る舞ってもらったお茶にひかれた。普段の生活にも所作が生きれば」と、習い始めて間もない野迫川村の長谷川桂二さん(50)。10年のキャリアを持つ奈良市の吉倉英美さん(28)は「日本文化に触れたいと思って始めた。茶道は総合的な芸術のようなもので、さまざまな角度から学び、楽しめる」と、ますます魅力を感じているという。
堂後教授は「茶道の源流とされる奈良で、いくら習っても完成されることのない奥深さや多面性を知ってもらえれば」と語る。
客を思う「もてなしの心」が凝縮された茶道。そんな和の本質こそが心を豊かにしてくれる。   (石橋明日佳)

表千家堂後茶道教室 奈良市内には大森教室(大森町10―1)と高御門教室(高御門町36)がある。主に茶を点てる点前や客作法を学ぶ。茶道には流派ごとの点前、作法があり、口伝で伝えられる。表千家には9つの免状があり、うち7つの免状は稽古年月と稽古実績に応じて師範による取り継ぎが可能で、他2つは家元による伝授のみ。稽古は水曜午後7時~と土曜午後3時~。見学は初回無料。(☎0742・31・3058)。

【鹿角抄(コラム)】 心震える体験探して 「感動した人や場所」を教えてください

「本当に感動したことを伝えるのが一番、人の心に強く訴えかけると思うんです」。先日、取材先から言われた〝当たり前〟の一言は私の心に新鮮な響きを持って刺さった。
先日紙面で紹介したトラベルガイドブック「d design travel 奈良」。東京のデザイン会社が作成したこの本を私はとても気に入っている。読んでいると、奈良の素朴さが美しくていとおしくてたまらなくなるのだ。
特に好きなのが、東大寺の二月堂を紹介したページ。地元の人に「二月堂は朝が最高」と勧められた編集長の空閑(くが)理(おさむ)さん(33)が、奈良滞在時の習慣となった朝の散歩風景を書いている。タイトルは「奈良の光を見る場所」。二月堂に上り切ると見える、朝日に輝く空、雲、山、街。その光景を「奈良時代の創建から刻まれ続ける、毎日、毎時、毎分、毎秒の、〝奈良の日常〟すべてだ」と締めくくっている。
二月堂の紹介はいろんな本で読んだが、これほど私の心を二月堂に駆り立てたものはない。書き手との感動の共鳴がそこにあった。
ふと思い出して、平成21年に千葉総局にいた当時のスクラップブックを引っ張り出し、初めて書いた連載記事「自分時間~移住という選択肢」を懐かしい思いで読んだ。%e3%80%90%ef%bc%91%ef%bc%92%e6%9c%88%e6%97%a5%e7%94%9f%e6%ad%8c%e8%88%9e%e4%bc%8e%e3%80%91%e3%80%80%e5%b0%be%e4%b8%8a%e6%9d%be%e7%b7%91%e3%80%81%e6%9d%b1%e5%a4%a7%e5%af%ba%e4%ba%8c%e6%9c%88%e5%a0%82
当時、千葉県館山市の移住体験ツアーに参加した私は、海と土を愛する館山の人と、「人間らしい生活」を渇望する都会からきた参加者に話を聞く中で、心から館山を好きになった。読者に伝えたくて、デスクに頼み込んで書かせてもらった記事はつたなさは隠せないが、われながら館山の人々の熱意や移住希望者の心の痛みが伝わってきて、悪くない。
奈良生活も4カ月目。初心を思い出しながら、心が震える体験を探し歩こう。ぜひ読者の皆様にも「取材してみてほしい感動した人や場所」を教えてほしい。うまく共鳴できれば、きっといい記事が生まれます。 (田中佐和)

【やまと人巡り】将来は「多くの人に来てもらえる牧場に」  辻村優さん(17)

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共進会では月齢などでグループ分けされた乳牛の体格や歩く姿などが審査された。
父、崇さん(49)は牧場を経営し、約50頭の乳牛を飼育している。優さんも牛舎の清掃などを担当し、計49頭が出品された今回の共進会ではアニー号を引いて会場を歩いた。
将来の抱負は―。「牧場を継ぎ、多くの人に来てもらえるような牧場にしたいです」  (岳)

【やまと人巡り】気持ち伝えてくれた子供支援 茶谷知伸さん(24)

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学生時代、児童養護施設の実習で、夢を熱く語る子供の姿に打たれた。「まっすぐな気持ちを伝えてくれた子供がいた。何とかサポートしたいと思った」
「現状がほとんど知られていない」と悩みや課題は多いが、やりがいもある。今は仕事の幅を広げるため社会福祉士の資格取得を目指し、勉強に励んでいる。  (浜)

【やまと人巡り】マガジンに込めた奈良への思い  大浦悦子さん(69)

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元県職員。行政へのクレーム対応が多く、退職時は「人の相手も奈良もこりごり」と北海道への移住を考えた。だが地域の「がんばっている人」と接するうちに、「おもしろくなって移住し損なった」と笑う。
平成22年に人や取り組みを紹介する雑誌を発刊。古くさいと思っていた奈良の良さを再認識し、タイトルには田舎の意味を持つ「俚(さとび)」を選んだ。「素朴な俚の心に立ち返り、自然を愛し、人とのつながりを大切にしたい」。年4回発行のマガジンには、そんな思いが込められている。  (佐)

【やまと人巡り】石彫作業場建設でインド支援 常盤勝範さん(54)

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住職の常盤勝範さん(54)は「堅い花崗(かこう)岩からやわらかな仏の表情を創意工夫しながらつくってきた。強いものから優しいものが生まれるイメージ。実にうまくできたと思う」と振り返る。
インドとの関わりは昭和40年代からで、交流は半世紀におよぶ。石彫事業は昨年秋の持国天など4体の建立で終結したが、「つくるのはやめますが指導は続ける。これからも支援をお願いします」。  (宮)

【なら正月記 参】花びら餅 旬の素材と華やぎ味わう  萬御菓子誂處「樫舎(かしや)」

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半月状の見栄えも趣深い「花びら餅」は、新年を祝う伝統的な和菓子。平安時代の宮中の新年行事に由来するとされ、お茶の世界では京都・裏千家の初釜で出されることでも有名だ。
奈良町(奈良市)の「萬御菓子誂處(よろずおんかしあつらえどころ)『樫舎(かしや)』」が作る花びら餅は、もち米の中でも最高級の「近江羽二重糯(はぶたえもち)」と、上品な味わいの「備中白小豆(しろしょうず)」で作った白あんを使用。選び抜いた素材で客をもてなす。
「食感を作るのがわれわれの仕事。きれいな湧き水をそのままお客さまにお出しするといった感じです」と、主人の喜多誠一郎さん(43)。何より素材を大切にして手数を加えず、畑の恵みを直接届けることがモットーという。
□  □
和菓子といえば京都が注目されがちだが、実は奈良も菓子とは縁が深い。吉野が本場の葛菓子を思い浮かべる人も多いだろう。
菓子はそもそも果実を意味したといい、「日本書紀」は、宝来山古墳(奈良市)が御陵とされる垂仁天皇の命で、田道間守(たじまもり)という人物が常世(とこよ)の国から「非時香菓(ときじくのかくのみ)」(橘の実)を持ち帰ったと記載。田道間守は「お菓子の神様」として崇められている。春日大社(奈良市)では古代に伝わった唐菓子「餢飳(ぶと)」が神饌(しんせん)として神に供えられ、そうめんの原型とされる「索餅(さくべい)」も奈良に伝わってきたという。
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「当時の日本人の味覚に合う形で取り入れたのは大きな功績でしょう」と、奈良女子大学の高村仁知教授(食物栄養学)はたたえる。奈良市内には林浄因を祭る「林神社」まであり、4月19日には菓子業界の繁栄を祈願する「饅頭まつり」が開かれ、全国から数多くの饅頭が献上。奈良と菓子との縁深さを実感させてくれる瞬間だ。
□  □
正月の花びら餅を見てもそうだが、和菓子の特徴の一つは四季の変化と関係が深いことだろう。春は桜餅やうぐいす餅、夏は柏餅や水ようかん、秋には月見団子や栗饅頭…といったふうに実に豊かだ。
「樫舎」ではクリやユズ、ユリネなどの素材を生かす菓子を提供。喜多さんは「素材を一番おいしい状態で食べてもらえるよう、常に旬に合わせた菓子作りを心がけている」と語る。
店内にはそんな喜多さんの説明に耳を傾けながら菓子を楽しむカウンター席も。取材した日も満席で、横浜市の会社員、安田理絵さん(40)は「菓子作りの様子を直接見ながら食べられ、とびきりおいしい」と満足そうだった。
春夏秋冬、奈良の名店で生まれる菓子の数々。そこには〝旬〟に敏感な日本人の感性が息づいている。   (浜川太一)

 樫舎 奈良町の元興寺近くにある和菓子店で、近鉄奈良駅から南東へ徒歩約15分(奈良市中院町22の3)。季節の生菓子などを作っており、春日大社や薬師寺、東大寺、元興寺といった有名社寺にも納めてきた。営業時間は午前9時~午後6時。無休。注文販売が中心で、喫茶も。カウンター席は要予約。問い合わせは(☎0742・22・8899)。日本唯一の「まんじゅうの社」として知られる林神社(同市漢国町6)は近鉄奈良駅から南へ徒歩数分。

【なら正月記 弐】清酒発祥の地 水と景色が醸す美酒  奈良豊澤酒造

「菩提酛(ぼだいもと)」と書かれ、荒縄が幾重にも巻き付けられた大きな蒸し器。蒸された酒米がござに入れられる度にもうもうと湯気が%e3%80%90%e3%81%aa%e3%82%89%e6%ad%a3%e6%9c%88%e8%a8%98%e3%80%91%e2%91%a1%e9%85%92%e3%80%80%e3%82%b5%e3%83%96%e3%83%bb%e6%ad%a3%e6%9a%a6%e5%af%ba%e8%8f%a9%e6%8f%90%e9%85%9b%e4%bb%95%e8%be%bc%e3%81%bf上がり、寒中に熱気があふれ出す。
「清酒発祥の地」とされる奈良市菩提山町の正暦寺で、毎年1月に行われる「菩提酛清酒祭」(今年は9日)。県内蔵元の有志らが参加し、「菩提酛」と呼ばれる酒母をつくる仕込み作業が行われる。
正暦寺では中世、神仏にささげるために「僧坊酒」を醸造。菩提酛による酒の仕込みは室町時代からの歴史があり、現在に至る酒造技術の原形という。途絶えていたが、蔵元有志や寺関係者らが平成11年に製造法の再現に成功した。
「いい酒はきれいな水と美しい景色から生まれます」。正暦寺の大原弘信住職(63)が語るように、辺りの森林や清流を見ていると、間違いなくうまい酒が醸されそうに感じる。
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そんな奈良県内には現在、約30軒の蔵元があり、それぞれ特色のある〝うま酒〟を醸している。
その一つ、奈良市の「奈良豊澤酒造」は、大吟醸の「豊祝」が全国新酒鑑評会で12回も最高賞の金賞を受賞。純米吟醸「無上盃」も人気だ。
「飲み飽きない酒造り」がモットーという蔵に入れてもらうと、仕込まれた米の甘い香りが漂ってきた。
ずらりと並ぶのは9千㍑の大きな桶。中をのぞくと発酵中の白い醪(もろみ)が静かに泡立っている。蔵人は毎朝5時、発酵を均等化するために竹棒で醪や酒母をかき混ぜる「櫂(かい)入れ」を行うという。
「ここは蔵の心臓部。麹(こうじ)づくりで酒の味は8割方決まる」と話す豊澤孝彦社長(43)に案内してもらったのは、醸造を左右する麹をつくる麹室だ。麹は米に菌を繁殖させたもので、室内の温度は31~32度に、湿度は70%に保たれる。上半身裸の蔵人たちが作業に励む姿を目の前にすると、時代がひと昔前に戻ったかのようだ。
機械化されている蔵も多いというが、豊澤社長は「機械では温度が分かってもカビの生育などは調整できない。これがうちのやり方」と信念を曲げない。
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奈良豊澤酒造が手作業にこだわり、1カ月かけて仕込まれた後にしぼられた生酒は薄く透き通った山吹色をしている。ここから貯蔵などの工程を経てようやく透明な日本酒が完成するのだ。
新酒がうまいこの時期、3月中旬まで期間限定の酒が販売される。「豊祝 吟醸あらばしり」は山田錦を100%使い、昔ながらの「袋しぼり」で造られた香り高い酒。「豊祝 吟醸にごり酒」はまろやかで、コクのある味わい。いずれも酒好きをうならせそうだ。
「和食が高い評価を受け、日本酒も見直されつつある。食中も楽しめる酒を造っていきたい」と豊澤社長。清酒発祥の地で醸されるこだわりの酒がさらに新たな歴史を刻んでいく。   (神田啓晴)

奈良豊澤酒造 JR桜井線帯解駅から西へ徒歩約10分(奈良市今市町405)。明治元(1868)年創業。3月中旬まで販売の「豊祝 吟醸あらばしり」と「豊祝 吟醸にごり酒」はともに1800㍉㍑入りで2700円。蔵直送の酒が飲める直営店「蔵元豊祝」は、県内では近鉄奈良駅改札前と大和西大寺駅コンコースにある。問い合わせは同酒造(☎0742・61・7636)。

【なら正月記 壱】春日大社 中旬の献  新たな年 神への感謝凝縮

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盆に載せられた饗膳(料理)が恭しく運ばれてきた。
杉の一枚板に盛られているのは、青豆をのせた白蒸し御強、タイの刺し身、ブリの照り焼き、ゴボウ・ダイコンの酢の物、塩餡、ミカン。タイのすまし汁と焼丸餅入り雑煮、「ほとぎ」と呼ばれる素焼きの小壷に入った濁り酒もつく。
春日大社(奈良市)の「中旬の献」と呼ばれる膳。元旦からの祈禱が満願となる今月7日に行われる神事「御祈禱始式」で供えた神饌(酒食)を下げた後、直会(宴会)で参列者に振る舞われる。
やわらかい白蒸し御強はかむほどに米の甘みがじんわりと広がる。各品、おしなべて素材のうまみを生かした上品な味付けだが、塩餡(砂糖を使わない塩味の餡)はおかずとも菓子ともつかない不思議な味だ。
「質素に感じるかもしれませんが、『海なし県』の奈良では古来、海の魚は貴重。正月の豪華な神饌として考えられた献立でしょう」と、大社の中野和正権禰宜(51)は語る。
飽食の時代に暮らす私たちには、一目しただけでは正月らしい豪華さを感じることはできないかもしれない。だが、神聖なお供えがもとであることを知った瞬間、新年を迎えられた感謝の念がこみ上げてくる。
□  □
御祈禱始式は五節句の最初に当たる「人日」に国家の安泰や皇室、国民の繁栄を祈願する重要な神事。春日大社幣殿に白装束の神職が並んで、祓串を手に「中臣祓」(大祓詞)を3度奉唱し、凛とした新春の境内に祈りの声が響く。
古来のこの神事は明治維新に中断。明治25年に再興され、中旬の献はこのときに初めて作られたというが、同27年1月7日の社務日記には「御祈禱始の参列者に7百年来古式の飯食を出す」と記されている。
大社の秋田真吾学芸員(50)によると、明治25年の約700年前に当たる養和2(1182)年1月7日の社務日記に御強を供えた「御強神事」のもととなった「強物」の記載がある。「中旬の献の『白蒸し御強』と通じる。御祈禱始式の再興に当たり、神饌の献立を700年前の神事に求めたと考えられる」と秋田学芸員。御強は、神に供えられ、食されてきたごちそうだ。
□  □
春日大社で行われる祭儀は日々の「日並御供」に加え、「旬祭」(毎月1、11、21日)や「節供祭」(年5日)、さらに「春日祭」「春日若宮おん祭」など年間2千回以上にのぼる。それらの多くで供えられる神饌には米や魚、野菜を調理せず、まるごと神前に供える「生饌」と、調理したものを供える「熟饌」の2種類がある。
もとは熟饌が主流だったが、明治以降は生饌が大半となり、熟饌の伝統を受け継ぐ神社は全国でもごくわずかに。春日大社では御祈禱始式や春日祭、春日若宮おん祭など、限られた祭事で「古式神饌」として献じられている。熟饌は神職が丹精して調理し、神への真心が込められるのだ。こうした神饌をもととする中旬の献は「神徳」を授かる貴重な膳ということになる。中野権禰宜はこう話す。
「本来は、今では素朴とも思えるような料理がごちそうで、神様に感謝しながらいただいた。『原点に戻れ』と教えられているように感じます」      (田中佐和)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 暮らしが多様化し、季節感も薄れつつある昨今、「正月」を実感できない人も増えている。だが、奈良はまだまだ新年らしさを体感できる風物に満ちている。食や行事を通じて奈良の〝旬〟を紹介する。

 春日大社・御祈禱始式と中旬の献 7日午前10時から。神職が幣殿で中臣祓を唱えた後、直会殿で春日明神の姿を描いた掛け軸「鹿島立神影図」に神饌を供え拝礼。狂言も奉納される。その後、参列者に「中旬の献」が振る舞われる。一般参拝者は参拝所から御祈禱始式の一部を見ることができる。中旬の献は御祈禱始式以外の日にも予約制で試食が可能。5500円。7日前の予約で10人以上から。問い合わせは春日大社(☎0742・22・7788)。

 

1月2日は新聞休刊日です。

本年は産経新聞ほか、グループ紙をご購読いただきまして、まことにありがとうございます。

来年1月2日は「新聞休刊日」となっており、朝刊の配達がございません。大変ご不便をおかけいたしますが、ご理解くださいます様宜しくお願い致します。

普段、インターネットでニュース記事を読んでいただいている皆様、「ニュースはネットで十分」と思っていらっしゃる皆様、紙の新聞を読むと、新しい発見があるかもしれません。

産経新聞の試し読み、ご購読はhttp://sankei-nara-iga.jp/koudoku.html

平成29年度も宜しくお願い致します。

【2016 この1年㊦】 11月 式年造替で「正遷宮」  12月 キトラ古墳壁画の修復完了

 《9月》
【4日】紀伊半島豪雨から5年を迎え、7人が死亡、4人が行方不明となっている五條市大塔町で追悼式。約250人が参列し、新たに建立された慰霊碑も除幕された。

リオデジャネイロ・パラリンピックの柔道で銅メダルを獲得した正木健人選手

リオデジャネイロ・パラリンピックの柔道で銅メダルを獲得した正木健人選手

【10日】リオデジャネイロ・パラリンピックの視覚障害者による柔道、男子100㌔超級で、天理大出身の正木健人選手(29)が銅メダルを獲得。
【24日】明日香村のキトラ古墳の極彩色壁画を保存・展示する「キトラ古墳壁画体験館 四神の館」が開館。文化財保護の原則である現地保存によらず、壁画を墳丘外で保存しながら展示する国内初の施設。
【30日】政務活動費の収支報告書に添付の領収書を偽造したなどとして、上田悟県議(59)が辞職願を提出。
 《10月》
【1日】春日大社の20年に1度の国宝・本殿修理「式年造替」を記念し、増改築された収蔵・展示施設「国宝殿」(旧宝物殿)がリニューアルオープン。
【4日】東大寺の東塔跡から奈良時代の基壇を発見。治承4(1180)年の平氏による南都焼き討ちとみられる火災の痕跡も残っていた。
【21日】国の文化審議会が、奈良少年刑務所(旧奈良監獄)を重要文化財に指定するよう答申。
【22日】天川村の大峰山系弥山で、9日から行方不明になっていた島根県の冨樫篤英土木部長が登山者に発見され、2週間ぶりに救助された。
【23日】任期満了に伴う葛城市長選で、元市議の無所属新人、阿古和彦氏(57)が初当選。
 《11月》
【6日】春日大社の「式年造替」で、移殿に移っていたご神体が本殿に戻る「正遷宮」が行われた。

ご神体が本殿に戻る「正遷宮」(門井聡撮影)

ご神体が本殿に戻る「正遷宮」(門井聡撮影)

【16日】和歌山県かつらぎ町で1万本超の大麻草が栽培されているのが見つかり、県警が大麻取締法違反(営利目的栽培)の疑いで、指定暴力団東組幹部ら男4人を逮捕。
【16日】県出身で法相、文相などを務めた奥野誠亮氏が死去。
【17日】平成16年、奈良市立富雄北小学校1年の有山楓ちゃん=当時(7)=が誘拐、殺害された事件から12年。同校で全校集会が開かれた。
【20日】田原本町が実施する地域子育て支援拠点事業をめぐり、業務を委託された同町の社会福祉法人「愛和会」が偽造領収書を町に提出したとして、県警が有印私文書偽造・同行使容疑で、元理事長の男(69)らを逮捕。
【20日】興福寺の「国宝館」と「東金堂」で、文化財に液体がかけられている被害を確認。21日には東大寺大仏殿と橿原神宮でも同様の被害を発見。
《12月》
【8日】明日香村の修復施設での修復作業が完了したキトラ古墳壁画の「玄武」「青龍」などを、国営飛鳥歴史公園内につくられた保存・展示施設「四神の館」に移送。約10年がかりの同壁画の修復がほぼ完了した。

キトラ古墳北壁の「玄武」(文化庁提供)

キトラ古墳北壁の「玄武」(文化庁提供)

【11日】「奈良マラソン2016」が開催。計約1万7千人の市民ランナーが駆け抜けた。
【22日】世界遺産・法隆寺にある国指定重要文化財の「東院四脚門」にダンプカーの荷台が衝突。四脚門の屋根部分にある棰13本と破風1本が割れるなどした。
(肩書、年齢は報道当時)

【2016 この1年㊥】 7月 参院選、佐藤氏が初当選  8月 大野選手、タカマツペア金メダル

 《5月》
【7日】奈良市月ケ瀬の山林で無許可で土砂を掘削したなどとして、県警が県砂防指定地管理条例違反と森林法違反容疑で三重県伊賀市の土砂採取会社社長(73)を逮捕。
【7日】考古学者で元奈良国立文化財研究所長を務めた坪井清足氏が、急性心不全で死去。94歳。
【12日】前方後円墳の原型とされる陸橋を持つ弥生時代末期の大型円形周溝墓が橿原市の瀬田遺跡で見つかり、奈良文化財研究所が発表。
【17日】県などのJR関西線奈良-郡山駅間の新駅構想で、建設予定地が奈良市八条付近に決定したことが判明。
【24日】春日大社の「式年造替」で本殿の板塀に描かれた壁画5面が40年ぶりに描き直されることになり、はぎ取り作業が報道公開。

壁画が40年ぶりに描き直されることになり、はぎ取られる春日大社本殿の板塀

壁画が40年ぶりに描き直されることになり、はぎ取られる春日大社本殿の板塀

《6月》
【8日】警察官をかたって現金1千万円をだまし取ろうとしたとして、生駒署などが詐欺未遂容疑で兵庫県三田市の無職少年(17)を逮捕。
【10日】文化庁は、明日香村の施設で修復中のキトラ古墳壁画の天文図を報道陣に公開。実物公開は初めて。
【10日】安倍晋三首相が白鳳短大(王寺町)を訪問、学生と昼食をともにして「18歳選挙権」をPRした。

学生とランチをともしに「18再選挙権」をPRする安倍首相

学生とランチをともしに「18再選挙権」をPRする安倍首相

【22日】参院選が公示され、奈良選挙区(改選数1)は現職と新人3人が立候補。
【27日】橿原市の県立橿原高校で、放課後2時間限定の期日前投票所が開設された。
 《7月》
【10日】参院選が投開票され、奈良選挙区では自民新人の佐藤啓氏(37)が現職と新人2人を破り初当選。
【12日】奈良市の「環境清美センター」駐車場に職員がトレーニングルームを設置していたことが発覚。
【21日】皇太子ご一家が橿原市を訪れ、神武天皇陵をご参拝。長女の敬宮愛子さまは初めてのご参拝となった。
【28日】法務省が、明治時代に造られた奈良少年刑務所(奈良市)を廃止し、保存・活用するため民間事業者を募集すると発表。
《8月》
【3日】天理市の大規模太陽光発電建設事業をめぐり、官製談合防止法違反容疑で大阪地検特捜部が同市役所などを家宅捜索。
【8日】リオデジャネイロ五輪で、柔道男子73㌔級で天理大出身の大野将平選手(24)が金メダルを獲得。
【16日】川上村の国道169号の大迫トンネル内で乗用車とワゴン車が正面衝突して火災が発生。ワゴン車内から2人の遺体が見つかった。

決勝を制し、拳を突き上げて喜ぶ高橋礼華選手(奥)と松友美佐紀選手(甘利慈撮影)

決勝を制し、拳を突き上げて喜ぶ高橋礼華選手(奥)と松友美佐紀選手(甘利慈撮影)

【18日】リオデジャネイロ五輪でバドミントンの女子ダブルスで、橿原市出身の高橋礼華(あやか)選手(26)と松友美佐紀選手(24)の「タカマツペア」が金メダルを獲得。
【20日】紀伊半島豪雨から5年を前に、十津川村で水害慰霊祭。
【24日】文化庁は、約10年がかりの修復を終えたキトラ古墳壁画を明日香村に新設の「四神の館」に修復施設から移送した。
(肩書、年齢は報道当時)

【2016 この1年㊤】 3月 智弁学園、センバツ初V  4月 天皇、皇后両陛下ご来県

今年も残りあとわずか。奈良県内の主なできごとを3回にわたり振り返る(肩書・年齢は報道当時)。
《1月》
【8日】香芝市で平成27年7月に小6女児が連れ去られ翌日保護された事件で、未成年者略取や逮捕監禁致傷などの罪に問われた伊藤優被告(26)に奈良地裁が懲役4年の判決。
【15日】天理市や大和高田市、三郷町、川西町、山添村などの10市町村が、天理市内で計画中のごみ焼却施設の共同運営に向けた協定を締結。35年度の稼働開始をめざす。
【24日】宇陀市誕生10周年記念式典が同市文化会館で開催。
【26日】田原本町長選で新人の森章浩氏(40)が無投票で初当選。吉野町長選では現職の北岡篤氏(59)が無投票で3選。
【26日】天理教の「教祖130年祭」が天理市の教会本部神殿で行われ、国内外から約20万人が参拝。
【29日】観光オフシーズンの集客を狙う「奈良大立山まつり」が奈良市の平城宮跡で初開催。県の発表では2月2日までの会期中に約5万人が来場。
《2月》
【7日】高取町長選で現職の植村家忠氏(72)が3選。
【8日】東大寺が華厳宗管長・第222世別当(住職)に狹川普文(さがわふもん)師(64)を選出。
【17日】生駒市が学研高山第2工区のうち都市再生機構の所有地(132・5㌶)を3億4千万円で取得すると発表。平成32年度の事業着手をめざす。
【18日】橿原神宮が約1年がかりで修復した重要文化財の本殿(1855年建築)を公開。
【21日】シャープが不振が続く液晶パネルの国内生産拠点集約のため、天理工場での生産を別工場に移すと発表。
 《3月》
【3日】不動産開発大手「森トラスト」が奈良市役所前の県有地に外資系ホテル「JWマリオットホテル奈良」(150室)を32年春に開業すると発表。宿泊客増加をめざす県が誘致。
【23日】舒明天皇や蘇我蝦夷の墓の可能性がある明日香村の小山田遺跡で、飛鳥時代の巨大方墳の基礎部分とみられる遺構が橿原考古学研究所の調査で見つかる。
【31日】智弁学園が選抜高校野球大会決勝戦で高松商を2-1で破り、初優勝。
【31日】県警がスーパーマーケットで客の財布を置引したとして前生駒署長(60)を減給の懲戒処分。
《4月》
【1日】五條市と大淀町、吉野町内の公立3病院を再編した南奈良総合医療センター(ベッド数232床)が大淀町に開院。
【2日】天皇、皇后両陛下が来県し、橿原考古学研究所を視察される。

天皇、皇后両陛下が神武天皇陵を参拝された

天皇、皇后両陛下が神武天皇陵を参拝された

【3日】橿原市の神武天皇陵で「神武天皇二千六百年式年祭山陵の儀」。天皇、皇后両陛下が出席し、山陵に拝礼される。橿原神宮では「神武天皇二千六百年大祭」が行われた。
【11日】2歳の長男をプラスチックの収納ケースに閉じ込めて殺害したとして、県警が殺人容疑で父親の会社員、井上祐介容疑者(39)=生駒市=を逮捕。
【22日】東大寺と奈良文化財研究所などが同寺東塔跡から七重塔があったことを示す「七」の文字が刻まれた鎌倉時代の瓦が出土したと発表。%e3%80%90%e5%9b%9e%e9%a1%a7%e3%8a%a4%e3%80%91%e3%81%95%e3%81%97%e5%a5%88%e8%89%af%e3%83%bb%e6%9d%b1%e5%a4%a7%e5%af%ba%e3%81%ae%e6%9d%b1%e5%a1%94%e8%b7%a1%e3%81%8b%e3%82%89%e3%80%81%e3%80%8c%e4%b8%83
【23日】キャロライン・ケネディ駐日米大使が就任後初めて来県し、奈良市の東大寺福祉療育病院障害児入所施設で子どもたちと交流。

「奈良は競争してでも学ぼうという気風が多少低い県」 県が率先した一年と荒井正吾知事がまとめ

今年を表す漢字に「学」を選んで発表する荒井正吾知事

今年を表す漢字に「学」を選んで発表する荒井正吾知事

荒井正吾知事は27日、年内最後の定例記者会見で今年の県政を表す漢字に「学」を選び、「優れた先駆者から学んだことを県政に反映させようと、この一字に頼って仕事をした1年だった」と振り返った。
荒井知事は「何事も学ばなければ前に進めないが、奈良は他と競争してでも学ぼうという気風が多少低い県だと思っていたので、県が率先してその姿勢を示してきた」と説明。今年うれしかった出来事に外資系高級ホテル「JWマリオット」の奈良市への誘致が決まったことなどを挙げ、「学び、努力してきたことが今年実を結んだ。来年も同じ気持ちで仕事をしていきたい」と話した。

【鹿角抄(コラム)】「春日若宮おん祭」参加が…下関で痛感した凶悪事件の重さ

私の代役で「春日若宮おん祭」に奉仕者として参加した同僚の神田啓晴記者(左)

私の代役で「春日若宮おん祭」に奉仕者として参加した同僚の神田啓晴記者(右)

17日朝。春日大社の摂社・若宮神社(奈良市)の祭典で師走の恒例行事でもある「春日若宮おん祭」に奉仕者として参加する予定だった。奈良らしい文化に触れる機会を前に心を弾ませながら歯を磨いていたところ、携帯電話が鳴った。
「山口に行ってくれ」。7年前に発生し未解決となっていた女子大生殺害事件で、山口県内で事件直後に交通事故死していた当時30代の男が、殺人などの容疑で書類送検されることになったため、その出張取材を命じられた。スーツケースに衣類などを詰め込み、祭りの雰囲気漂う街に後ろ髪を引かれながら、男の出身地である山口県下関市へと向かった。
JR新下関駅で新幹線を下り、車で現地へ。普段はのどかであろう住宅街には、既に多くの報道陣が詰めかけていた。「信じられない」「まじめそうだったのに」|。付近住民は口をそろえ、驚きの表情だった。弟と2人兄弟だったという男。実家は祖父母の代から商売を営んでおり、幼いころの元気良くあいさつする笑顔が印象的だったと聞いた。
事件発生から7年余りが過ぎ、容疑者が死亡していることで「迷宮入り」になる部分も多い。遺族は「犯人が見つかったという安堵感はある」としつつ、「言葉では表現できない怒り、悲しみ、憎しみ、苦しみをぶつける先がありません」などとコメント。どうして、この男が-。男の周辺を取材した記者自身も、この疑問への答えは結局見つけられなかった。
男の弟が実家があった場所に建て直した美容院には、「一身上の都合で閉店することになりました」との貼り紙があった。周囲に聞くと、最近になってから弟家族の姿も見かけられなくなったという。
事件は、たくさんの人々の人生を狂わせてしまう。事件取材、報道にあたるということの〝責任〟を、改めて痛感した。
(森西勇太)

【We are Sneaker Ages】奈良育英高校が準グランプリ校賞 西の京高校「満足できる演奏」

準グランプリ校賞に輝いた奈良育英高校。パワフルに歌い上げた

準グランプリ校賞に輝いた奈良育英高校。パワフルに歌い上げた

大阪市此花区の府民共済SUPERアリーナで25日に開催された高校・中学校軽音楽系クラブのコンテスト「第37回 We are Sneaker Ages」(産経新聞社・三木楽器グループ主催、大阪芸術大学グループ特別協賛)のグランプリ大会。奈良県内からは奈良育英高と県立西の京高が出場し、見事な歌と演奏を披露した。
「軽音楽の甲子園」と呼ばれるグランプリ大会は、8月の予選会を勝ち抜いた中学2校、高校18校の計20校が出場した。2年ぶり4回目の奈良育英高軽音楽部はヘビーメタルダンスユニット、BABYMETALの「THE ONE」、4年ぶり3回目の西の京高軽音楽部は歌手、JUJUさんの「やさしさで溢れるように」をそれぞれ演奏した。
奈良育英高は、楽曲の持つ壮大なスケールを見事に再現し、準グランプリ校賞に輝いた。西の京高も、熱のこもった演奏で観客を魅了した。
奈良育英高3年でキーボード担当の岡田典子さんは「アリーナの会場をイメージしていつも全力で練習してきた。本番では『THE ONE』のメッセージのように、メンバーの気持ちがひとつになった」。西の京高3年でアコースティックギター担当の永保実華さんは「不思議と緊張はしなくて満足のできる演奏ができました」と話した。

熱のこもった演奏で観客を魅了した西の京高校

熱のこもった演奏で観客を魅了した西の京高校

【やまと人巡り】池田和美さん(68) べっ甲細工工、「奈良べっ甲」時代に合わせ

%e6%b1%a0%e7%94%b0%e6%9f%8f%e8%97%bb%e3%81%95%e3%82%93%ef%bc%94 べっ甲細工工として「現代の名工」に選ばれた桜井市の池田和美(雅号・柏藻)さん(68)。自宅横の工房で作務衣を着込んで黙々とべっ甲に美しい模様を彫り込んでいく。「受賞は身が引き締まる思い。もっといい作品を生み出したい」とさらに上を目指す。
父は和菓子職人で、兄は貝彫刻師という職人一家に生まれ育った。16歳から大阪のべっ甲細工師の下で10年間、透かし彫りの技術を学び、昭和49年、大神神社の近くに「池田工房」を作り、独立した。
べっ甲はウミガメの一種タイマイの甲羅を原料としており、上之宮遺跡(桜井市)からは飛鳥時代のものとみられるべっ甲の破片が出土している。正倉院にも「玳瑁如意」が収められるなど奈良との縁は深い。そんなことから「日本のべっ甲は奈良が発祥」との思いで自身の作品を「奈良べっ甲」と名付け、次男の征二さん(36)と二人三脚で各地の百貨店で販売会を開いている。
彫刻に使うカッターは200種類以上で、すべて自作で大きさ、形も様々。伝統工芸を守り続けてきた足跡が道具にも表れている。作品は、以前は和装に合わせたかんざしや髪留めが大半だったが、今はブローチやネックレスなどのアクセサリーも作る。「時代に合わせたもの作りで技術を継承していきたい」と今後も奈良べっ甲の魅力を発信し続ける。  (啓)

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【やまと人巡り】南浦太市郎さん(64)  印伝製造工、「燻べ」技法を独自に復活

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一般的にはなめした鹿革にうるしで模様をつけたものが印伝として知られるが、「もともとそんな簡単なものではない」という。奈良時代に起源を持ち、鹿革をワラやマツを燃やした煙でいぶして染め上げる「燻(ふす)べ」。この技法を独自に復活させた。
この鹿革は軽くて丈夫で、いぶすことにより抗菌効果もあったため、戦国~江戸時代には武将の武具や侍が持つ財布、火消しの装束として使用されていた。
自宅横の工房は香ばしいにおいで包まれていた。染め上がった鹿革は山吹色や飴色で優しい色合い。その肌触りは赤ちゃんの頬のようになめらか。「一般的な印伝より手間暇がかかるし、復活まで試行錯誤を繰り返した。それだけに、その風合いは何にも代え難い」と自信を持つ。
短大を卒業後、地元の化学研究所に勤め、約3年間、土壌の分析をしていた。ところが、加工した鹿革に感動し、印伝製造工の道へ方向転換。「革をなめしたり染める工程では研究所の経験が生きた。人生はどう転ぶかわからない」
染色などの制作技術は伝承されず、ほとんど残っていなかった。独学で技術を磨き、今では東大寺の国宝に見られる文様の再現にも成功した。「伝統工芸は材料確保から技術継承まで、すべて難しい。まだ再現できていない文様もある。40年やってもまだまだ」。挑戦はこれからも続く。  (明)

「育児、職場…どちらあきらめなくていい」「新しい仕事、昇進オファー…迷わず進むべき」 村木厚子さんが講演

講演する村木厚子さん

講演する村木厚子さん

女性の活躍をテーマに前厚生労働事務次官の村木厚子さん(60)が奈良女子大記念館講堂(奈良市)で講演し、約250人が参加した。
奈良県が3月に策定した「女性の輝き・活躍促進計画」をより進展させようと企画した。

村木さんは「女性の活躍~あなたに贈るメッセージ~」をテーマに講演し、日本の出生率や女性の就業率などを諸外国と比較してグラフで紹介。「日本の女性は健康で、教育水準も高い。準備は整っており『もったいない国』だといわれている」と指摘し、「育児休暇も大切だが、職場復帰をしてからが大変。どちらもあきらめなくていい環境づくりに期待したい」と述べた。
また、働く女性に向けて「新しい仕事や、昇進のオファーなどがあれば、迷わず進むべき」とエールを送り、「階段を上れば、見えなかったものが見えるはず」と訴えた。
参加した生駒市の主婦、久保美智子さん(38)は「丁寧に仕事や家事をされている方だと思った。視野を広げるためにも、仕事をしていた方がいいのではと考えさせられた」と話していた。

「このままでいいはずない」「憲法改正で日本を取りもどそう」 大和郡山で櫻井よしこさんが講演

憲法改正を訴える櫻井よしこさん

憲法改正を訴える櫻井よしこさん

ジャーナリストの櫻井よしこさんが22日、大和郡山市のやまと郡山城ホール大ホールで、「憲法改正で、日本をとりもどす‼」をテーマに講演し、市民ら約1000人が耳を傾けた。
憲法改正への機運を盛り上げようと「美しい日本の憲法をつくる県民の会」が主催した。
講演で櫻井さんは、未解決のままの北朝鮮による日本人拉致事件などを挙げたうえで、「戦後、日本は現行憲法のもと米国に国防を任せきりにし、何もできない国になってしまった」と指摘。「このままでいいはずはない。私たちの未来の世代に申し訳ない」などと述べ、憲法改正の必要性を強く訴えた。

【奈良の食】人気店「洋食 春」が新大宮にバーガー、サンドの専門店

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中林さんは福岡県北九州市出身。地元の洋食店で18歳のころから修業したが、20代前半のころ、仕事中に包丁で負ったけがのため、左腕の激痛に苦しむように。治療のため、病院探しを転々とし、たどり着いたのが奈良市だった。
結局、左腕は肘上から切断。だが、「『必ず春は来る』。だから、一緒にがんばろう」と奈良の病院長に励まされて移住。「お世話になった病院の人や奈良の人たちに恩返しを」と、平成23年10月、ならまちに「洋食 春」をオープンした。
「慣れれば右腕だけでも十分料理できますよ」と笑顔で話す中林さんは、スタッフの誰よりも仕事の手が速い。大和牛とヤマトポークの合い挽き肉を使った特製ハンバーグなどが評判となり、店は観光客だけでなく地元の人も通う人気店に。今年8月、イベントへの出店用に作った「ならまちサンド」が大好評だったことから、持ち帰り専門店オープンに向けて新たにメニュー開発に取り組んだ。
おいしさにほれ込んだ天然酵母食パン専門店「プルンニャ」(京都府城陽市)のオーナーを口説き落とし、小売りのみだった同店の食パンの卸販売に加え、オリジナルのバンズ開発を依頼。さらに、本店では出していないミンチカツに、「実は苦手」という奈良漬けを使ったタルタルソースをトッピングした「ならまちサンド」(税別1300円)と、本店で人気のハンバーグとミートソースをサンドした「はるバーガー」(ポテト付きで税別千円)の2品を作り上げた。

「はるバーガー」(左)と「ならまちサンド」

「はるバーガー」(左)と「ならまちサンド」

かぶりつくと肉汁があふれ出す「はるバーガー」は、チーズや目玉焼きのトッピングも可能。端までしっかりカツが挟まった「ならまちサンド」は、奈良漬けの甘みと食感が絶妙なアクセントになっている。
午前11時半から営業する「春」は、売り切れ次第閉店。日曜定休。注文を受けてから作るため、急ぐ場合は電話予約がお薦め。問い合わせは同店(☎0742・36・9115)。

【あっ、これ食べたい!】空気もおいしい 森の中のピザ屋さん「642PIZZA」

「642PIZZA」(奈良市学園南)は%e3%81%82%e3%81%a3%e3%80%81%e3%81%93%e3%82%8c%e9%a3%9f%e3%81%b9%e3%81%9f%e3%81%84%ef%bc%81%ef%bc%93%e3%80%80%ef%bc%96%ef%bc%94%ef%bc%92%ef%bd%90%ef%bd%89%ef%bd%9a%ef%bd%9a%ef%bd%81閑静な住宅街の中にある〝森〟の中にある。オーナーの山形香苗さんと友人らが、森を切り開き、店舗や薪窯などすべて手作りした。
ランチはサラダ、スープ、デザート、ドリンク付きのセット。午後1時半からは単品での注文もできる。
「毎日、薪窯に『頑張れ』と話しかけながら、窯の温度を見ている」という山形さんは、1枚ずつ丁寧にピザを焼く。使う粉の配合の研究を重ね、もっちりしながらもサクッとした食感の生地に仕上げられている。
「冷めてもおいしく食べられる生地にしている」(山形さん)ので、ピザが冷めてもまた違った味わいが楽しめる。23~25日は座席数限定で、午後6時からクリスマスディナーも特別営業(要予約)する。杵と石臼を使った「642PIZZAお餅つき大会」(要予約)も1月3日午前11時から開催予定で、餅つきに加え大釜で炊く豚汁とピザのセットも用意する。森の中で自然を満喫しながらの食事はとても癒され、お薦めです。  (朋)

【住所】奈良市学園南2-17|1
【連絡先】☎0742・55・2934
【ホームページ】http://office642.info/
【営業時間】午前11時~午後6時(ラストオーダー午後4時)。カフェタイムは午後1時半から
【定休日】火、水曜日と12月30~元日、1月4日、17~25日は休み
【メニュー】ピザセット(1800円~)、ドリアセット(1800円~)。午後1時半からは、セット以外に単品の注文も可能。マルゲリータ(1300円)、マリナーラ(千円)、リンゴのデザートピザ(1200円)、きのこドリア(千円)など。クリスマスディナー(3千円~)※全て税別
お餅つき大会(大人642円、小学生以下300円)。豚汁&ピザセットプラン(大人2千円、お子様セットピザ有り1400円、ピザ無し800円)※餅つき大会は全て税込
【特典】「あっ、これ食べたい!」の紙面の切り抜きを持参し、食事をすると1ドリンクプレゼント(2人まで)。1月日まで

【We are Sneaker Ages】奈良から県立西の京高校と奈良育英高校が出場 25日にグランプリ大会

「軽音の甲子園」と呼ばれる中学・高校の軽音楽系クラブコンテスト「We are Sneaker Ages」(産経新聞社、三木楽器主催、大阪芸術大学グループ特別協賛)の第37回大会。県内からは、県立西の京高校(奈良市)と奈良育英高校(同)の2校が25日、大阪市の大阪府民共済SUPERアリーナで開かれるグランプリ大会に出場する。本番を前に、両校とも練習に熱が入っている。

%e5%a5%88%e8%89%af%e8%82%b2%e8%8b%b1%e2%91%a1 2年ぶり4回目の出場の奈良育英高校軽音楽部は、「一音伝心」をモットーに練習に励んでいる。
メンバーは3年生7人、2年生4人、1年生1人の12人編成。大編成バンドや、5人編成バンドでロックを基本に、コピーだけでなくオリジナル曲も作り、さまざまな楽曲に挑戦しているという。部員のほとんどが初心者だったが、パートやフレーズごとの練習などに毎日重点的に取り組んできた。ギター担当の3年、岡畑美紗(みすず)さん(17)は「一音一音に心を込めて、気迫が前面に出るように演奏したい」と話す。
「去年グランプリに出られなかった悔しさをぶつけたい」と、演奏曲として選んだのは、ガールズヘビーメタルダンスユニット「BABYMETAL」の「THE ONE」。同大会でヘビーメタルを選ぶ学校は少ないといい、岡田典子部長(18)は「攻めの姿勢で臨みたい」と話す。
5月、この曲を演奏した映像を動画投稿サイト「YouTube」で配信すると、再生回数は2万5千回を超えた。「たくさんの方に見てもらっていると、良いプレッシャーになる。小さくまとまらない演奏を心がけられるようになった」と岡田部長。
大会ではトリを務める。「こんなチャンスはめったにない。奈良育英らしさを会場に響かせてグランプリを目指したい」と気合十分だ。

%e8%a5%bf%e3%81%ae%e4%ba%ac%e9%ab%98%e6%a0%a1%e2%91%a1 県立西の京高校軽音楽部は創部39年、部員60人以上の大所帯。礼儀を重んじながらも、和気あいあいとした雰囲気だ。代表の3年、永保実華さん(18)は「派手さはないが、メーンをしっかりと輝かせて、〝聴かせる〟ことができるのが西の京らしさです」と話し、高い歌唱力と息の合ったパフォーマンスでグランプリを目指す。
グランプリ大会出場は4年ぶり3回目。メンバーは3年生6人、2年生5人。毎日欠かさず個人、パート、バンドでの練習を行っている。メトロノームを使って「合わせる」練習を重点的に行うが、それだけでは難しい部分は部員同士で目をみて、呼吸を合わせる工夫をしているという。
演奏曲は歌手JUJUの「やさしさで溢れるように」。曲中には「ありがとう」という言葉もあり、永保代表は「日頃、支えてくれた人に向けてひとつひとつのフレーズを大切に届けたい」とする。
メインボーカルを務める3年、風元麻由香さん(17)は「息や音程を合わせることは重要だが、ボーカル3人の個性をより出せるようにしたい」と意気込んでいる。
顧問の千竃佑佳教諭(25)は「緊張する舞台だと思うが、後悔のない満足のいく演奏をしてほしい」とエールを送った。

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